メコン地域諸国の障害者関連諸施策に焦点を当てるのが本研究である。タイを除くメコン地域諸国では障害者関連諸施策が近年制定されたことから、まだ研究が進んでいない背景があった。また、各国別で状況が明らかになりつつあるものの、日本との比較研究は行われていなかった。東南アジアから日本の社会福祉現場に従事する外国人が増加傾向にある中、同研究は適切な時期に行われたものと言える。 多言語地域であることから基礎情報が限定的である点と予想される中、本研究を通じて比較可能なデータ一覧を作成した。まず、各国の障害担当局・課に調査協力を依頼し、基幹となる障害者関連施策の重複・相違点などの項目を中心に回答を得た。ついで、過去に各国政府との連携活動を行ったことのある主要な障害当事者・家族団体に個別面接調査を行った。 調査結果をまとめていく上で、政府関係者を含む障害分野の関係者とワークショップや研究会を通じてすり合わせを行った。こうしたプロセスにより、日本およびメコン川流域国全体の観点から、基幹となる障害者関連諸施策に加えて、障害当事者・家族団体の現状および関連する諸問題の概要を明らかにすることができた。さらには、障害当事者で国レベルで活発に活動しているキーパーソン、政府の政策担当者および大学関係者を巻き込んだ同トピックの研究に関する人的ネットワークを構築することができた。 なお、本調査結果の一部は、複数の大学や障害者団体による研究誌・ジャーナル、メコン地域諸国に拠点を持つ複数の大学・団体による学会や海外の障害者施策に関心を寄せる社会福祉法人による研究会等で発表した。
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