本研究は、I 1920年代の国際会議や規約の設定を通して赤十字国際委員会がいかに組織化されたかを、国際政治の中に位置づけマクロなレベルで分析すること【赤十字国際委員会の組織化の検討】、II 同時期に人道危機解決のために派遣された調査団の活動内容や個々人の働きを通して、人道活動の専門化がいかに進められたかをミクロなレベルで検討すること【人道活動の専門化の検討】、の二方向で実施される。 2018年度は、課題Iに関連して、赤十字国際委員会が第一次世界大戦後の新しい国際関係の中で自らの立ち位置をどのように定め、その確立のためにいかなる活動を行ったのかという点について、1920年に誕生した国際連盟との関係から検討するための調査を行った。成果公表については、2019年9月にポルトガル・リスボンで開催される国際主義に関するシンポジウムでの報告が予定されている。その際には、ヨーロッパ外のアクターとして、日本赤十字社の1920年前後の動向も検討する予定であり、そのための調査は今後進める。 課題IIについては、すでに収集して手元にある赤十字国際委員会の中東欧地域に派遣された調査団に関する史料の解析を進めると同時に、2019年3月にはフランス・パリに2週間滞在し、国立図書館および外務省文書館において新たな史料・資料調査を行った。成果発表については、昨年度のイスラエルでの国際ワークショップ報告を、出版が予定されている論文集のために論文としてまとめ、編者に提出した。また、関連するテーマで、国際シンポジウムでの報告1本と、書評二本の執筆を行った。
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