研究課題/領域番号 |
17H07157
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
林 和眞 東京都市大学, 都市生活学部, 講師 (70714179)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | グローバルイノベーションネットワーク / ネットワーク分析 / 特許ネットワーク / 複雑系ネットワーク |
研究実績の概要 |
1.文献レビューを通じた現状把握を行った。都市圏構造を対象とした実証研究を中心に文献を収集してレビューを行った。まずは、都市圏分析に関して、EU都市圏の分析と日本国内における研究などの先行研究を収集した。また、理論的画面で空間分析とネットワーク分析を組み合わせた取り組みを収集し、最新の手法を確認した。 2.データベースを構築した。特許公報は、各国で入手可能であり、最も体系化しているイノベーション成果データであるので、今回の研究でも使用した。日本、韓国、中国、台湾の特許公報を照会し、発明者と出願者のデータベースを構築する作業を行った。作業にあたって、大量のデータ構築が簡単ではないため、多方面でのイノベーションネットワークデータ、例えば全国イノベーションデータなどの企業データも利用可能か確認している。 3.まずは日本と韓国における特許ネットワークデータベースを通じたネットワーク分析の結果を随時、学術論文と国際学会で発表を行った。ネットワークのノードの特性を把握できる指標である、中心性指標、クラスター指標、コミュニティ指標などを利用し、分析した。その際、ネットワークにおける重要なハブと役割を分析し、それらの発明者が立地している地域の特徴を考察した。また、コミュニティ分割を利用し、サブグループの抽出を行い、ネットワークでのクラスターを抽出した。今後、他の国とのネットワークデータに関しても追加分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データベースの構築にかかる時間が予想以上であったのが、第1の理由である。 研究活動スタート支援の場合、交付決定が他の科研より遅くなされているにも関わらず、予算を使用する必要があるため、そのための事務的な手続きの時間で研究の進捗が遅れた。とりわけ、中国の特許データの収集でウェブサイトの問題やデータの信頼性などの問題が浮かび、丁寧にチェックしているため、予想以上の時間を費やしてしまった。 一方で韓国と日本のデータベースは順調に構築していることと、国際特許を中心に構築し直す方策なども考えているため、おおむね予定通りに研究を随行できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度から引き続き、特許データベースの構築を完了する。その後、ネットワークを実際の空間構造へ反映する。その際に空間情報として、出願者と発明者の住所を用い、Geocodingにより地図上の座標を収得し、発明者と出願者を追跡する。これらの分布の空間情報データを地域範囲で類型化する。周辺地域とコア地域に分類し、特徴を把握しておく。 分析において、データマイニングの手法を通じた特許データの解析と空間情報処理に関して国内外の研究協力者との積極的な意見交換を通じて発展させる。 その結果を踏まえて、ネットワーク変容過程と要因を考察する。変容過程を分析する際に、ネットワーク全体の指標である、集中度(全体ネットワークのノードがネットワーク中心部に位置するノードに集中している程度を示す指標)、SMI指数(グループ内密度を相対的に比較する指標)を用いる。主なネットワーク形成要因として技術分野の違いによる差異、企業立地などによる産業構造の変化、交通距離の変化などについて、考察する。とりわけ、技術分野による違いを分析することにより、より政策的示唆を得られると考えられる。要因分析の結果を踏まえ、ネットワークダイナミックにおける先行研究(BAモデル、Small world modelなど)を参考とし、モデル化を行う。 分析の成果を生かし、国内外の政策をレビューした上で、今後の地域計画の戦略の提案を行う。提案は、地域を体系的に分類する。一例として産業における特徴を持っている都市圏に分けて整理する。①各ネットワークの長・短所、②ネットワークモデルによるシナリオ導出、③シナリオ達成のための計画手段を導き、提案する流れである。
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