本年度は、文献レビューの結果を踏まえて、データベースをさらに拡充させた。その後、詳細な分析を行い、東アジアにおけるイノベーションネットワークのモデルを提示し、政策提案を行った。 1)データベースの構築:去年度は各国における公開された特許公報を用いたが、今年度は、世界的に最も展開されているアメリカの特許データベースであるUSPTOを利用し、国際的な特許と東アジアの特許ネットワークをそれぞれ構築した。 2) ネットワーク分析の実施:国際的な特許ネットワークのデータベースと東アジア国々どうしのつながり、それぞれについてネットワーク分析を行った。ネットワーク分析において、ノードの特性を把握できる指標である、中心性指標、クラスター指標、コミュニティ指標を利用し、分析した。その際、ネットワークにおける重要なハブと役割を分析し、それらの発明者が立地している地域の特徴を考察した。また、コミュニティ分割を利用し、サブグループの抽出を行い、クラスターを抽出した。 3)ネットワークの空間構造の分析:ネットワーク分析とともにネットワークの重要ノードの空間情報を通して、地理的な特徴を見出した。特許から導かれる空間情報は、出願者と発明者の住所があり、本研究では、出願者は機関同士のつながりを、発明者は個人の動きを見出すために利用した。Geocodingにより地図上の座標を収得し、発明者と出願者を追跡した。そして、確率的にありうる距離と実際の結びつきを比較分析した。 4)今後の地域戦略への示唆:分析の成果を生かし、国内外の政策をレビューした上で、今後の地域計画の戦略の提案を行った。知識交流がグローバル化することで、以前は主な研究ハブとして機能していたのが日本国内の発明者と企業が多かったが、近年新たに中国とシンガポールの中心性が高まることが見えてきた。これらに対するイノベーション政策への取り組みが重要であると考える。
|