研究課題
韓国における農業者団体による貿易自由化への反対運動が、日本におけるそれよりもつよい政治的インパクトを持ち、政府による農業部門への手厚い補償金という結果をもたらしたのは、日本に比べ、韓国では農業者団体による政治活動に世論の広範な支持があったためであることが明らかとなった。2000年代以降の日本では、全国最大の農業者団体である全国農業協同組合中央会(JA全中)が1990年代以来の政治改革の中で抵抗勢力と批判される立場にあり、広く国民的支持を得て政治運動を推進できる状況になかった。GATTウルグアイ・ラウンド農業合意をめぐる国内補償を政府・与党に要求する過程においては、JA全中の露骨な補償要求は世論の強い反発を呼び起こした。結局、ウルグアイ・ラウンド農業合意をめぐって、JA全中は政府・与党から数百億円の補償金を取り付けることに成功したものの、それと引き換えにする形で世論からの決定的な批判を買うこととなった。これに対し、1980年代には民主化運動の一翼を担った韓国の農業者諸団体は、社会運動関係者全体から広く支持を調達できる立場にあり、それゆえに政府の貿易自由化政策に対しては、都市住民らと強調して反対運動を展開することができた。こうした一連の経緯を、文献レビューやインタビュー調査を用いて進めた結果、韓国では日本と異なり、農業者による貿易自由化への反対運動が与野党双方に強い圧力として作用し、政府から日本円で数兆円規模にも達する、多額の補償金を得ることに成功したという点を解明するに至った。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
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北東アジア地域研究
巻: 24 ページ: 1-16
IAFOR Journal of Politics, Economics & Law,
巻: 4-1 ページ: 30-39
https://doi.org/10.22492/ijpel.4.1.03