研究課題/領域番号 |
17H07163
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
嘉瀬 貴祥 立教大学, 現代心理学部, 助教 (40804761)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | ライフスキル / 首尾一貫感覚 / 健康教育 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,大学生における首尾一貫感覚(以下,SOCと略記)とライフスキル(以下,LSと略記)の関連性を定量的に明らかとし,その結果に基づいた心理教育プログラムを検討するため,以下の2段階で研究を実行する計画を立てている。まず研究1として,SOCとLSに関する理論モデルの構築と検証を行い,次に研究2として,研究1の結果をふまえた健康教育プログラムの開発に取り組むという手順である。2017年度は研究1に,2018年度は研究2に主として取り組むのが当初の予定である。 2017年度は研究1の目的に沿い,2017年12月に株式会社インテージへ委託し,調査モニターである大学生600名を対象とした中規模のウェブ調査を実施した。この調査により,大学生におけるSOCとLSのほかに,健康教育プログラムの作成時に考慮すべき精神的健康,性格特性,ライフキャリア・レジリエンスといった要因に関する量的データを収集することができた。加えて,2017年11月~12月にかけて大学生20名を対象としたインタビュー調査(半構造化面接法)を実施した。この調査では,大学生の日常生活におけるストレスマネジメントの実態に焦点を当て,SOCやLSがどのように活用されているのか具体的に把握することを目的とした。調査を通じて,高いSOCを持つ者のLSとストレスマネジメント様式の特徴に関する質的データを得ることができた。 ウェブ調査で得られたデータに関しては,統計的分析を経て2件の学術論文として現在投稿中である他,2018年度に開催される学会(健康心理学会,パーソナリティ心理学会など)における発表を申請中である。さらにインタビュー調査より得られたデータについては,2018年度に追加調査を実施したうえで質的分析を行い,Mental Health & Prevention誌に学術論文として投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のように2017年度には,研究1の目的を達成するために必要な量的調査(ウェブ調査)と質的調査(インタビュー調査)を実施した。そのうち量的調査に関しては,得られたデータを分析しその結果を学術論文として投稿することができた。2017年度中に実施した調査より得られた知見を学術的な形で即座に集約できたことから,研究課題の進捗状況は良好であると考えられる。加えて質的調査については,研究協力者の募集から調査の実施までに比較的長い時間を要するインタビュー調査を,倫理申請からデータ収集まで迅速に実施することができた。これらの成果は研究の立案時に想定されていた内容以上に,2018年度の研究をより充実したものにすると考えられる。 本研究課題に関連して,SOCに関する2件の研究成果を学術誌(パーソナリティ研究,健康教育学会誌)に論文として公表することができた。これらの研究は本研究課題の大きな目的である健康教育プログラムの考案に対して重要な示唆を与える知見を報告している。 以上の様に2017年度には,研究課題全体,あるいは2018年度に実施する研究へ向けて非常に有意義な成果を上げることができたことから,その進捗は計画以上のものであったと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度には,本研究における研究対象である大学生の生活状況を考慮したために実施時期を移行した,縦断的ウェブ調査を実施する。この調査は2018年4月下旬と7月中旬に実施するが,2017年度のうちに委託先である株式会社インテージとの調査内容や実施形態の調整などが完了しており直ちに実施可能な状況である。さらに追加のインタビュー調査についても,すでに調査協力者の募集を実施し必要な人数から同意を得ている。このように健康教育プログラムの検討に必要なデータの収集に関してはすでに準備が整っているため,確実に調査を実施しより正確なデータを収集することに注力する。 さらにこれらの調査から得られたデータの分析,結果の考察に関しては,2017年度より本研究課題に関して討議を行ってきた上野雄己研究員(日本学術振興会PD)に引き続き協力を仰ぐほか,2018年度の研究目的である健康教育プログラムの検討に関して,大石和男教授(立教大学),島本好平准教授(明星大学)など関連領域の研究者とも連携して進めていくことに同意を得ており,今後の研究を推進するうえで必要となる研究体制も確保できている。2018年度は量的分析(ウェブ調査から得られたデータの統計的分析)に加えて質的分析(インタビュー調査から得られたデータの分析や健康教育プログラムの検討)を行うため,分析結果についての客観性の担保の観点から上述のような研究者との連携がより重要となる。従って研究を進めるなかでより多面的な意見が必要であると判断した場合には,さらに多領域の研究者に協力を仰ぐ予定である。 なお本研究課題に関しては,健康教育プログラムの検討に際して長期にわたる試行錯誤が求められるため,本研究課題終了後もより発展的な研究として継続して取り組む予定である。
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