研究課題/領域番号 |
17H07168
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 康太郎 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 研究助手 (00801060)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 松竹座 / 映画館 / 音楽 / レヴュー / 歌劇 |
研究実績の概要 |
本研究は、松竹座チェーンの興行形態を分析することで、1920年代の日本国内における音楽文化の地域差と地域間の影響関係を考察する試みである。平成29年度は研究期間が9月からの半年間であったため東京と大阪の映画館興行の周辺調査に徹し、①『東京演芸通信』の目録化作業、②関西周辺の映画館プログラムの調査、③松竹関連雑誌の調査を行った。資料調査は東京国立近代美術館フィルムセンター、早稲田大学演劇博物館に文献調査を行い、併せて山梨県立図書館と太田市立新田図書館に出張し、梅村紫声文庫、田中純一郎旧蔵資料を閲覧した。 ①『東京演芸通信』の見出しの目録化は1923~24年の2年分を終えた。これにより、大阪で道頓堀松竹座が完成した1923年頃の東京の音楽実践では、松竹座の楽劇部が試み始めるようなレヴュー/ヴォードヴィル上演が見られないことが改めて確認できた。また「今週の奏楽」欄から、当時の映画館での管弦楽演奏(休憩奏楽)の広がりや各館の楽長の特定を行うことができた。 ②映画館プログラムについては松竹座をとりまく関西の周辺の映画館興行のありようを優先的に調査した。東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵の大正期の大阪・神戸・京都の映画館プログラムを閲覧し、関西の映画館でもほとんどレヴュー/ヴォードヴィル上演が見られないことから、改めて松竹座の特異性を確認した。 ③松竹関連雑誌については、道頓堀松竹座が開館した1923年をふくむ1920年前半の記事を中心に調査した。特に『蒲田画報』『松竹画報』『松竹』『キネマ』等の記事を閲覧し、音楽に関連する記事と読者投稿の分析を進め、東京で撮影された「モダン」な映画としての松竹映画のイメージを考察した。 こうした松竹映画の興行形態については東京の事例に関する研究成果を論文化したほか、同時代の映画館における音楽映画の興行をめぐり小唄映画と琵琶映画等に関する口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間が半年であるため当初から基礎調査の年とする計画であった平成29年度は、松竹関連雑誌の調査、『東京演芸通信』2年分の目録化、映画館プログラムの閲覧等を進め、大よそ想定していた資料収集と調査を終えることができた。ただし、映画館プログラムについては関西の映画館興行のありようを優先して調査したため、松竹座各館の本格的な調査については次年度に持ち越すこととした。また、『東京演芸通信』は想定していた以上に年度毎に分量の差が大きかったほか、印刷状態が悪く判読の困難な部分が多かったため、当初より1年分少ない作業結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も継続して国立映画アーカイブおよび早稲田大学演劇博物館等を中心に調査を行い、道頓堀松竹座、浅草松竹座、新宿松竹座の映画館プログラムに考察をくわえる。具体的な松竹座の実践を捉えたうえで、その差異を浮かび上がらせることが課題となる。 なお、これまでの調査で松竹関連雑誌を中心に調査を行ってきたが、読者投稿文の十分な考察のためには更なる資料収集が必要である。そのため今後は『国際映画新聞』、『キネマ旬報』などの映画雑誌、および松竹座発行の『松竹座グラヒック』の関連記事を調査を行う。また、東京での興行空間の分析のため平成30年度も『東京演芸通信』の目録化と調査を継続して行うが、核となる時期の調査を優先するため、関東に松竹座が進出した1928年頃の記事を中心に目録の作成を行う。成果発表としては年度後半ないし年度末に関連研究会・学会での口頭発表を目指す。
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