サイレント映画の最盛期である1920年代の映画館のなかには、映画上映を行うだけでなく、洋画上映にくわえて歌劇や舞踊などの上演を組み合わせた独特の興行を行うものがあった。本研究はこうした複合的な興行実践を継続的に行った松竹座チェーンに注目し、1920年代の日本国内における現在と異なる映画興行の実態を検証するものである。道頓堀松竹座の開館した1923年と、浅草松竹座での映画興行が始まった1928年という二つの時期を軸として東京と大阪の映画興行のあり方を調査することにより、映画興行・音楽文化の地域差と変容、および変容の複数の背景を浮かび上がらせた。
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