研究実績の概要 |
本研究は、主にフランスとアメリカにおける『枕草子』の翻訳をケース・スタディーとして扱い、国際的受容により変容する日本古典文学の実態を、特にジャンルとジェンダー、翻訳をキーワードに解明することを目指したものである。 前年度、翻訳に関連する重要な書籍として、レオン・ド・ロニー(Leon de Rosny,1837-1914)が1871年に著したAnthologie japonaise『詩歌撰葉』を見出した。本年度は、同書について中古文学会のシンポジウムで発表するとともに、「19世紀フランスにおける和歌集の編纂ーレオン・ド・ロニーの実践」(『中古文学』第102号、2018年11月)と「日本文学の越境と交流ーAnthologie Japonaise『詩歌撰葉』をめぐって」(『近代人文学はいかに形成されたかー学知・翻訳・蔵書』勉誠出版、2019年)の2本の論文を掲出することができた。 また、ジャンルとジェンダーに関しては、女性読者の問題について取り組む研究者とともにAsian Studies Conference Japanでのパネル発表に応募した(パネル題目:Female Authorship,Readership,and Reception of Premodern Japanese Literature)。本発表は採択されたため、2019年6月に同学会で発表することが決まっている。そこでは『枕草子』について、「随筆」というジャンル分けの是非について検討したのち、江戸時代に女性読者がいかに『枕草子』を読んでいたかを『枕草子』の機能面から報告する予定である。
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