研究課題/領域番号 |
17H07174
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小野 亮介 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (00804527)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 亡命者 / ディアスポラ / トルコ / 中央ユーラシア / 極東 / テュルク / カザフ / タタール |
研究実績の概要 |
本研究は、1920-1950年代における中央ユーラシアの政治的変動の過程で排除されたテュルク系ディアスポラ、具体的には(A)ロシア革命後トルコ、ヨーロッパに逃れたトルキスタン人亡命者、(B)第2次世界大戦前・戦中において日本、満洲に滞在したタタール人、ウイグル人、(C)1950年代前半に新疆からインドを経てトルコへ移住したカザフ難民を取り上げ、一国史、一民族史の枠組みを超えた彼らの多地域・多言語的ネットワークの解明を目指すものである。 (A)については、トルコ学者としても著名な亡命者ゼキ・ヴェリディ・トガンによる亡命初期の著作に焦点を充て、彼の民族主義思想の根幹に社会主義的要素が強いことを指摘した。このことは、反ソ亡命者として称揚される彼のナショナリスト像に再考を促す足掛かりになると期待される。 (B)については、極東在住のタタール人コミュティの機関紙であった『民族の旗』紙を用い、在日・在満タタール人が戦中期にトルコへ移住する過程を明らかにした。移住の要因は多岐にわたるが、とりわけ今回の調査により、1939年のトルコ・エルズィンジャン大地震や被災者同胞への関心が、タタール人にテュルク系民族としての意識を強めさせる契機になったことを指摘した。 (C)については、トルコ西部・マニサ県在住の元難民1世A氏を訪れ、逃亡以前の新疆やカシミールまでの過程についてインタビュー調査を実施した。今年度も引き続きインタビューを行う予定である。また、1950年代に新疆を脱出したウイグル/カザフ難民に関して国際ワークショップを実施した。この種のイベントはトルコなど関係各国でも開催実績に乏しく、国際的な研究協力体制を構築するきっかけとすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付以来、資料調査、研究報告など概ね順調に研究を進めていたが、2017年12月に両手首を骨折する大怪我を負った。複数回の手術を経て、本報告時点でもリハビリを継続中である。そのため、フランス・フィンランド資料調査など冬季に実施予定だった計画のほとんどを断念せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
上述の大怪我のため断念せざるを得なかった資料調査(津田塾大学図書館、フランス・フィンランド調査)を本年度前半に実施しつつ、本来の計画に沿って研究を推進する。 (A)に関してはトルコ、ロシアで資料調査をするほか、資料の翻訳を引き続き専門家に委託することによって作業効率の向上を図る。 (B)に関しては、島根県立大学所蔵『民族の旗』紙や外務省外交史料館所蔵史料と上記フランス・フィンランド調査等との比較検証を目指す。 (C)に関しては、別資金も併用し、台湾に留学した難民の子弟も新たな調査とする。
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