既存研究では「保護する責任」を積極的に推進する行為主体が東南アジアにはほとんど存在しないとされ、当該地域の後進性が指摘されてきた。しかし、東南アジアにおいても「保護する責任」を推進する国境を越えた市民社会組織のネットワークが形成されるなど、新たな変化がみられる。本研究では、社会構成主義のアプローチを用いて「保護する責任」や残虐行為の予防に関する東南アジアの地域機構、各国政府、非国家アクターの言説や行動を分析し、当該地域では主要な研究機関や非政府組織(NGO)が現地の規範起業家としての役割を担い、残虐行為の予防ガバナンスの構築に関与していることを明らかにした。
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