研究課題/領域番号 |
17H07179
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
横手 康二 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (50802344)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 離散凸解析 / 分離定理 / Kuhn-Tuckerの定理 / オークション |
研究実績の概要 |
離散凸解析をオークションに応用した二つの研究を進めた。 一つ目の研究の題名は、「Application of the discrete separation theorem to auctions」である。この研究では、離散凸解析における凸集合の分離定理(以下「離散分離定理」と呼ぶ)をオークションモデルに応用した。オークションにおいて、価格pが競争均衡価格ではないとき、超過需要と超過供給は互いに交わらない集合となる。交わらない二つの集合に離散分離定理を応用することで、競争均衡価格の特徴づけが得られることを示した。この特徴づけのメリットは、競争均衡価格を「超過需要」「超過供給」という言語によって特徴づけた点である。さらに、超過需要/供給について価格を調整するアルゴリズムが Ausubelオークションと一致することを示した。この結果により、Ausubelオークションに経済学的な解釈を与えた。成果は論文にまとめインターネット上に公開している。さらに、大阪経済大学で開かれた「ゲーム理論ワークショップ2017」で研究報告を行った。 二つ目の研究の題名は、「The discrete Kuhn-Tucker theorem and its application to auctions」である。Kuhn-Tuckerの定理は、制約条件付き最大化問題をLagrange関数の鞍点に落とし込む定理である。本研究では、この定理の離散版を導入した。そして、既存のオークションアルゴリズムが、Lagrange 関数の鞍点を発見するアルゴリズムとして理解できることを証明した。経済学者に広く知られている「Kuhn-Tuckerの定理」と「オークション」の間に関係があることを明らかにした。成果は論文にまとめインターネット上に公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二本の論文を執筆し、学会報告も行った。すでに査読付き学術論文への投稿も行っている。そのため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
二つの研究目標とそれらを達成するための研究の推進方策を記述する。 一つ目の目標は「離散の凸性」と「耐戦略性」の関係を明らかにすることである。先行研究では、各人の選好が離散の凸性を満たす場合、耐戦略性を満たすルールが存在することが知られている。この「離散の凸性⇒耐戦略的ルールの存在」というインプリケーションの背後にあるロジックを明らかにする。そのために、このインプリケーションを個別の事案で示した論文を読み、数学的構造に踏み込んだ分析を推進する。 二つ目の目標は経済モデルにおける連続な戦略空間を離散化し、より現実に近いモデル分析を行うことである。経済学の文献のみならず、離散数学の文献も調査する。「連続から離散へ」というテーマを論じた離散数学の研究は複数存在しており、それらを把握した上で経済モデルへの応用を推進する。 昨年度同様、「理論分析⇒論文執筆⇒英文校正⇒論文公表⇒研究報告・投稿」という流れで研究を推進する。2018年の4月には、離散凸解析・オークションの専門家への研究報告を行った。この活動を今後も継続し、様々な研究者の意見を研究に反映させる。
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