2018年度は、三つの研究を進めた。一つ目は、離散的な財を扱うモデルと連続的な財を扱うモデルにおける価格調整メカニズムの統一的な理解である。二つ目は、離散的な財を扱う現実の問題への理論の応用である。三つ目は、平等主義的な分配方式の分析である。それぞれの研究について、内容を以下で説明する。 一つ目の研究では、異質財を人々の間で分配するモデルに着目をした。各人は財の上に選好を持ち、需給が一致する価格で取引が行われる。本研究の成果として、財が離散のケースと連続のケースの双方に適用可能な形で、価格調整メカニズムの構造を説明したことが挙げられる。双方のケースにおいて、価格調整は「分離超平面の法線ベクトルの方向に価格を動かす」という形で定式化できることを示した。ある価格が均衡価格ではないとき、総需要の集合と総供給の集合は「凸集合の分離定理」によって分離できる。分離超平面の法線ベクトルの方向に価格を調整すると、もとの価格は均衡価格に近づいていく。本研究の意義として、近年のオークション理論と古典的な市場の理論における価格調整の類似性を示したことが挙げられる。現在、この成果をもとに論文を修正中であり、2019年度中に発表することを計画している。 二つ目の研究では、「保育園の受け入れ枠」という離散的な財の分配問題を扱った。日本における受け入れ枠の分配問題を対象として、現行の制度の問題点を指摘すると共に、その解決策を理論的に分析・提示する研究を行った。この研究成果は、研究代表者のホームページ上でワーキングペーパーとして公開している。 三つ目の研究では、平等主義的な分配方式の分析を行った。全ての参加者に一定の効用を保証するアイデアを分配ルールに反映させる際、どのように既存のルールを修正すれば良いのか、協力ゲーム理論の枠組みを用いて分析した。
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