平成30年度は平成29年度に引き続き、子育て中のがん患者が自身のがんを子どもに伝える際の阻害要因と促進要因の特徴を明らかにすることを目的としたアンケート調査を行った。女性がん患者86名を対象に調査を実施し、主成分分析を行った結果、促進要因として1因子5項目、阻害要因として1因子4項目が抽出された。促進要因には、子どもとの関係性を重要視する内容が中核となっていること、阻害要因には、自身の病気のせいで子どもに負担をかけたくないという母親の気持ちとともに、伝えた後の子どもの反応に対する不安や心配が示された。 また、医療機関による支援が、親のがんについて子どもに伝える際の促進・阻害要因や親の心理的適応にどのような影響を与えるかを検討することを目的として、2時点での調査に同意した女性がん患者10名に質問紙調査を実施した。その結果、医療機関での支援は、親が自身のがんについて子どもに話す際の阻害要因や、親の不安、PTSSといったネガティブな心理変数に対する支援に寄与する可能性が考えられた。 次に、子育て中のがん患者に対する医療機関での支援の現状と課題を明らかにするために、支援を提供している機関の医療従事者3名に対して半構造化面接を行った。その結果、支援の現状として、親のがんについて子どもにどのように伝えるのかに関する説明が中心であることが語られた。 さらに、医療従事者が提供する支援と、子育て中のがん患者が医療者に求める支援との一致度を検討するため、医療従事者から得られた支援の現状の内容と、女性がん患者38名を対象としたアンケート調査から得られた医療者に求める支援の内容との対応を検討した。その結果、面接調査の対象者が所属する医療機関では、患者が医療者に求める支援をおおむね実施していることが示された。上記の研究結果について、学術雑誌へ順次投稿を行う。
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