本年度は、大別して次の3点が明らかとなった。 1点目は、主に中学校段階に焦点を当てて、保護者が公立学校と私立学校の期待している役割と機能の違いについて考察した。その結果として、私立学校を専願で受験を考えている保護者は、国公立専願や国公私立併願を考えている保護者と比べて、「教育方針や校風が気に入っているから」、そして「一人ひとりへの面倒見のよい学校だと思うから」という2つの理由を重視して、受験を検討するに至っていることが明らかとなった。逆に、国公立専願の保護者は、私立専願の保護者よりも、学力向上を期待する傾向が強く見られた。 2点目は、1990年代の公設民営大学設置と2010年代の国家戦略特別区域法に基づく公立国際教育学校等の公設民営学校設置の経緯について、比較分析した。両者は民間活力を利用した地域産業活性化策を実施するために設置が進められた、という点では共通しており、事業の継続性について、今後も注視する必要があることが明らかとなった。 3点目は、公立国際教育学校等管理事業をはじめとして、民間活力の利用で教育のグローバル化を進められているが、そもそも教育のグローバル化によって、学生生徒等の国際意識をどの程度、変えられるのかを検証した。スーパーグローバル大学創成支援事業に採択された早稲田大学のアンケート調査を分析したところ、諸外国との交流機会を積極的に提供することによって、外国人に対するポジティブなイメージが高まり、ネガティブなイメージが低くなることが示唆されていた。今後は、他の教育段階や公私立学校比較で調査することが課題である。
|