研究実績の概要 |
本研究の目的は以下の反応拡散モデル∂u/∂t(t,x) = △u(t,x)+f(x,u(t,x)), t∈(0,∞), x∈Ω (1)に対する精度保証付き数値計算法を開発することである。特に(1)の定常問題を対象とし、その正値解を数学的に厳密な意味で数値的に包含する手法を開発することを目的としている。本研究では以下の3つの手順で対象とする偏微分方程式の正値解の精度保証付き数値計算を行う。 手順1: 近似解wを求める 手順2: 手順1で得た十分に精度の良い近似解wの近傍に真の解uが存在することを示す 手順3: 手順2でwの近傍に存在することが保証されたuの正値性を確認する 上記手順を成功させるには手順1で十分に精度の良い近似解を求める必要があり、これは汎用的な数値計算ツールでは成し得ない。そこで本年度は近似解を構成するにあたり計算効率の良い基底関数の選定、および計算コストをできるだけ下げつつ手順2、3を遂行できる計算精度に関する事前準備を行った。結果としてルジャンドル基底(多項式をグラムシュミット法で直交化した基底)で近似解を構成し、計算の一部分にMPFRを用いた高精度計算を用いることによって所望の計算精度が達成できることを示した。一度、高精度計算を用いてガウス・ルジャンドル積分公式で必要となる分点を計算し、後の計算には疑似4倍精度区間演算もしくは倍精度区間演算を用いることで計算時間を短縮した。アレン・カーン方程式をはじめとしたいくつかの例で、上記手順1、2が十分な精度で達成できることを示し、その計算精度で手順3が成功することを理論的に裏付けた。
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