研究課題
本研究は、超伝導ボロンドープダイヤモンドの特異な堅牢性と超伝導転移温度10Kダイヤモンド合成技術を合わせた、物理接触、発熱、酸化に耐性のある堅牢なボロンドープダイヤモンド超伝導量子干渉計(SQUID)の実現および応用化を目的としている。2017年度では、ダイヤモンドSQUIDの特性評価システムを構築し、SQUIDの特性を決定するジョセフソン接合を、異なる3種類の手法(ステップエッジ構造、マイクロブリッジ構造、FIBナノトレンチ上エピタキシャル成長構造)にて検討した。ステップエッジ構造、FIBナノトレンチ上エピタキシャル成長構造で単結晶超伝導ダイヤモンドとして世界で初めてシャピロステップを観測した。ステップエッジ構造では、ステップ高さや角度と動作温度の相関が得られ、最大で4K程度の動作温度が得られた。バルクの超伝導転移温度10Kと比較して動作温度が低い要因は、転移温度の高い(111)面以外がステップ面に形成されることが考えられる。一方、FIB法によりナノトレンチを形成したダイヤモンド基板上へ超伝導ダイヤモンドをエピタキシャル成長させることで作製したジョセフソン接合では、液体ヘリウム温度4.2Kを上回る、ダイヤモンドとして世界最高動作温度7Kが得られた。この高い動作温度は、接合が転移温度の高い(111)面のみで形成されていることに起因する。これは同時に、バルクの転移温度10K近傍まで動作温度を向上させることが構造最適化により可能であることを示している。
1: 当初の計画以上に進展している
2017年度の目的であった①ダイヤモンドジョセフソン接合・SQUID特性評価のための測定系の構築、②ダイヤモンドショセフソン接合作製プロセスの確立・評価を当初計画通り達成した。加えて、デバイス応用に必要な超伝導ダイヤモンド微細加工技術を確立し、加工が超伝導特性へ与える評価も行った。ジョセフソン接合の動作温度が液体ヘリウム温度4.2Kを上回ったことで、走査型SQUID顕微鏡を含む超伝導デバイスシステム応用が容易となり、動作実証が可能な段階へ研究が進展した。
①ジョセフソン接合・SQUIDの動作温度向上FIBナノトレンチ上エピタキシャル成長構造ジョセフソン接合のトレンチ幅・深さおよび超伝導ボロンドープダイヤモンド膜厚の最適化を行うことで、動作温度10Kを目指す。また、本接合を用いたDC-SQUIDの動作実証を実施する。②走査型SQUID顕微鏡の動作実証ダイヤモンドSQUIDを用いた走査型SQUID顕微鏡の動作実証を実施する。磁場感度と空間分解能が両立可能なダイヤモンドSQUIDの基板を含めた素子構造や周辺の回路構成を検討する。
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