研究課題/領域番号 |
17H07194
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
矢部 智宏 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院助教) (40803234)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | メタン炭酸ガス改質 / 低温触媒反応 / 電場印加反応場 / 表面プロトニクス / レドックス |
研究実績の概要 |
触媒層に電場を印加し低温で反応を進める電場触媒反応をメタン炭酸ガス改質(二酸化炭素改質)に適応した。その結果、本来熱のみでは反応が進行しない低温域である150度(外熱供給)程度でも充分に高い活性が発現することを見出した。また、電場を印加することにより高メタン転化率の条件においても炭素析出が抑制された。電場中でのメタン炭酸ガス改質の反応メカニズムの全容解明を大目的として、今年度は電場印加効果を解明するために原料分圧変化試験、同位体交換(CH4→CD4)試験、in-situ DRIFTS(拡散反射IR)測定を行った。 触媒は1 wt%Ni/La0.1Zr0.9O2を用いた。同位体交換試験の結果、従来の熱反応では反応速度比rD/rHが0.61で同位体効果が見られた。一方、電場印加時にはrD/rHが1.0であり逆同位体効果が見られた。メタン分解及び表面吸着種と吸着酸素の反応の2つの経路が速度論的に遅い反応であり、反応条件によりどちらかが律速段階であるため、従来の熱反応においてはメタン分解が律速段階であると考えられる。一方、電場印加時には表面プロトニクスによりCH4分解が促進され、律速段階が変化したと考えられる。 分圧変化試験の結果より、水素生成速度式において、電場印加によりメタンの反応次数は0.26から0に減少した。これは電場により、メタン解離が促進されたためと考えられる。また、塩基性担体触媒において、中間体であるフォルメート種が安定することでメタンからの水素生成が減り、負の次数を示すと考えられており、水素生成速度式の二酸化炭素の次数が負から正に増加した結果と併せ、電場印加によりフォルメート種が活性化されたことが考えられる。これは電場印加中でのin-situ DRIFTS測定によっても確認できた。よって、電場印加によってメタン解離や表面反応が促進され反応の大幅な低温化が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタンと二酸化炭素を原料とした電場印加触媒反応の反応機構・伝導機構の中で、電場中でのメタン炭酸ガス改質の反応メカニズムの全容解明を目的として、今年度は電場印加効果を明らかにした。これらの結果により、従来の高温の触媒反応と異なる反応メカニズムの証拠が集まりつつあり、低温でのこれら原料をスタートした触媒反応の学理解明に近付いている。今後、担体の格子酸素との相互作用、レドックス機構の有無、伝導種の解明と電場印加反応場との関係を結びつけることで、低温触媒反応の学理構築と応用の礎となる。
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今後の研究の推進方策 |
担体の格子酸素の影響を検討するため、表面酸素を18Oでラベリングし、低温条件において電場印加反応場で格子酸素が使われるかどうか確認する。次に担体のレドックス能を触媒調製や前処理によって変化させ、活性への影響を検討する。 伝導種の検討に関しては、交流インピーダンス測定で表面抵抗を抽出し、特に低温でのプロトン伝導の挙動を追う。この際、反応雰囲気や温度、水分圧の影響が重要であるため、これらを変化させ詳細な検討を行う。また、電荷量を変えた際の反応速度をメタン分圧・二酸化炭素分圧を変化させた環境において算出し、交流インピーダンス測定において算出した伝導度の関係と併せ、分圧依存性とプロトン濃度からなる反応速度式の立式を目指す。さらに温度を精密に測定することにより、反応の見かけ活性化エネルギーについても算出し、伝導度(供給電荷量)と見かけ活性化エネルギーの関係を詳細に検討する。これらの検討により、電場印加中でのメタンと二酸化炭素を原料とした反応系において最適な反応条件、伝導パスの形成を確立し、PDCAサイクルによって更なる高効率なプロセスの開発を目指す。
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