研究課題
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)の患者は増加の一途をたどり、増加理由も根本原因に関しても依然として不明ではあるが、腸管免疫系に大きく影響する腸内細菌叢の「均衡破綻と多様性の消失;dysbiosis」が示唆されている。最近、口腔細菌叢のdysbiosisが腸内細菌叢のdysbiosisによる過剰な免疫応答のトリガーの1つであることが示唆された。本研究では、IBD患者と健常者の口腔と腸内細菌叢について、それぞれの均衡と多様性を定量PCRおよび次世代シークエンス解析を用いて比較検証し、炎症性腸疾患に関わる口腔細菌の探索の基盤となる研究を行う。本年度は研究実施に先立ち、鶴見大学歯学部倫理審査委員会への申請を行い、本研究の実施について承認された。また、物品の購入等、研究実施に向けた準備を進め、被験者の募集・スクリーニング診査・被験者選定を行なった。被験者に対しては下記に示す診査・解析を随時実施する予定であり、一部の被験者についてはサンプル採取を実施後、口腔・腸内細菌叢の次世代シーケンス解析を実施した。1)口腔診査 歯式・歯周ポケット深さ・プロービング時の出血・動揺度診査2)血液生化学検査 白血球数・C反応性タンパク質(CRP)・ヘモグロビン値・アルブミン値3)口腔・腸内細菌叢解析 口腔細菌叢の解析は、歯肉縁上下プラークと唾液を口腔サンプルとする。前者は、事前に口腔保健指導(機械的歯面清掃を含む)を実施後、小スポンジ球で採取する。後者は、無味無臭のガムを咀嚼する際に分泌する刺激唾液を採取する。各サンプルはDNA抽出キットを用いてDNAを抽出し、次世代シークエンス解析を行う。腸内細菌叢解析は糞便をサンプルとし、専用ブラシを用いて採取後冷凍保存し、次世代シークエンス解析を行う。
3: やや遅れている
本研究の被験者は、東京医科歯科大学医学部附属病院潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター外来に通院している寛解から軽症と診断された10名(IBD患者ボランティア)と申請者が従事する鶴見大学歯学部附属病院3DS除菌外来で募集する健康ボランティア10名としている。IBD患者ボランティアの募集については、東京医科歯科大学医学部倫理審査委員会の承認を得てからとなるが、審査申請中であり、承認が得られたのちに被験者の募集を行うため、やや遅れている。健康ボランティアについては鶴見大学歯学部倫理委員会の承認を得たため、被験者の募集・スクリーニング診査・被験者選定を行なった。一部の被験者についてはサンプル採取を実施後、口腔・腸内細菌叢の次世代シーケンス解析を実施している。
IBD患者ボランティア被験者については、これから被験者の募集を開始するため、研究期間がかなり限られているため、より多くの対象者に情報提供をするべく、臨床試験についての説明会を実施し、被験者確保に努める。健康ボランティアについても引き続き募集を行い、被験者に対して口腔診査・血液生化学検査・口腔・腸内細菌叢の次世代シーケンス解析を実施する。また、得られた結果のデータ解析を進め、研究成果の発表を行う予定である。
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