本研究では、授乳姿勢において上肢に痛みが発現する理由を授乳指導と授乳姿勢の現状から明らかにすること、添い乳(臥位での授乳)の適正化を目的として検討を行った。 それにより、添い乳は出産後入院中に指導を受けていないにも関わらずほとんどの母親被験者が行っており、交差抱きについて指導は行われているものの実際には行っていなかった。添い乳での筋電図(electromyography :EMG)を授乳側(授乳している方の乳房側)と非授乳側(授乳していない方の乳房側)で比較したところ、授乳側が高値を示していた。さらに、被験者ごとの短期的な痛みを見ると、授乳側(側臥位で床側)に多く痛みを感じており、筋負荷が大きい部位が短期的な痛みに繋がる可能性が推測できる。また、添い乳での左右不均等授乳が授乳期の痛み(慢性的な痛み)に繋がる要因の一つであることが明らかとなった。添い乳は、疲れた体を休めるために行われることや、授乳したまま寝てしまうことなどが想定され安楽な授乳姿勢であると思われがちだが、身体負担が大きくなる可能性が示唆された。さらに、被験者に自由に添い乳をとらせた結果、6パターンの姿勢が観察され、側臥位で児の口と乳頭を合わせて授乳しなければならず、状態は不安定となりやすく、安定させるための保持力が必要である可能性も明らかになった。 これらの検討から、身体負担が最小限となる添い乳姿勢には、状態の安定保持が必要であると言える。そのため、頭部から肩関節、背部肩甲骨、両膝間にクッションを使用し、頭部から背中部分は床と脊柱が45°となるようにクッション2個使用する姿勢であった。
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