本研究は環境管理会計の1つであるマテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting: 以下MFCA)を対象としている。MFCAは,企業が消費した資源の量を金額として評価し,管理の対象とすることによって,経済と環境の両立を可能にする会計手法として注目されてきた。企業における環境会計の実施の意義についての考察という全体的な計画の中で本年度では,平成29年度の成果である管理会計における感情を対象とした研究の特徴とパースペクティブの把握をもとに,経験的研究,またその成果の取りまとめを行った。具体的には,29年度から継続して実際にMFCAを継続的に実施している企業において経験的研究を行った。感情とは,一瞬で切り取れるものではなく,行動を通じて観察されるものである。本研究では,企業のMFCAに関わる行動を長期的に観察することによってMFCAの継続を可能にする感情が会計実践や計算を通じてどのように表わされるのかを明らかにする。本年度は継続的企業へのインタビュー,また継続している企業が参加しているワーキンググループへの参与観察,公表されている報告書・論文に対する調査を行った。その結果,MFCAを継続して適用するかどうかという点において当該企業がMFCAをどのような目的に対するマネジメント手法として用いるのか,またその背後には経営活動を通してコスト削減だけでなく使用資源の効率性を志向する感情が重要であることを明らかにした。さらに,その感情がMFCAの適用を経て変化する可能性も明らかとなった。既存研究にて指摘されていたこの結果をまとめ,学会報告および書籍への掲載を行った。
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