1仔マウスの作製 妊娠期に拘束ストレスのみを負荷した母マウスから出生した仔マウスを「ストレス群(S)」、拘束ストレス負荷中に爪楊枝を噛ませた母体から出生した仔マウスを「ストレス/咀嚼群(S/C)」、ストレスを負荷せず通常の母体から出生した仔マウスを「コントロール群(C)」とした。 2仔の新規ストレス負荷によるストレス過敏反応の解析 仔のHPA axisが障害されると、仔の脳は新たなストレスに対し視床下部室傍核(PVN)で過剰な副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を分泌するようになり、軽度なストレスに対しても過敏な反応を呈するストレス脆弱脳が形成される。そのため、出生仔に新規急性拘束ストレスを負荷し、視床下部室傍核におけるCRHmRNA発現をin situ hybridization法を用いて解析をおこなった。in situ hybridyzation法による組織像において、新規急性拘束ストレス前ではCRHmRNAの発現量は3群間で差はなかったが、新規急性拘束ストレス後はSが他の2群に比較して優位に高い値を示した(p<0.01)。一方、CとS/Cとの間に有意な差は認められなかった。
今回の研究において、妊娠期ストレス母体から生まれた仔マウスではPVNにおけるが副CRHが増加し,その結果軽度なストレスに対しても過敏な反応を呈するストレス脆弱脳が形成され、積極的な妊娠母体の咀嚼運動はPVNにおけるがCRHの発現を改善することによって新規ストレスに対する過敏性を和らげ、ストレスに強い脳の形成することが示された。これらの結果から、妊娠期ストレス中の母体の積極的な咀嚼運動が、仔マウスの脳の発達やストレス脆弱性の対処法として有用であることが示唆された。
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