研究課題
ワーキングメモリとは、課題を行っている間にそれを成し遂げるために必要な情報を一時的に保持する記憶のことである。ワーキングメモリは日常生活および社会生活に重要な認知機能であると同時に、知的障害児・者においては、その脆弱さが指摘されている。本研究では、知的障害児・者におけるワーキングメモリの特性を明らかにすることを目的とし、特に統合された情報の保持に注目して検討を行う。本年度は、ワーキングメモリにおける視覚情報と空間情報の保持(視空間性ワーキングメモリ)に関する検討を行った。知的障害児・者および彼らと知的水準が同等である定型発達児を対象に、ワーキングメモリ課題を実施した。この課題では、複数のオブジェクト(具体物の線画)が呈示され、その見た目に関する視覚情報、位置に関する空間情報、あるいは見た目と位置の統合情報を覚えることが求められた。その結果、知的障害児・者は空間情報の保持を求められた場合には定型発達児と同等に正しく課題を遂行することができたのに対し、視覚情報および統合情報の保持を求められた場合には、定型発達児よりも有意に低い課題成績を示した。以上により、知的障害児・者においては、空間情報を一時的に保持する機能は定型発達児と同等である一方で、(言語的プロセスが関与しうる)視覚情報および統合情報を保持する機能は定型発達児と比較して低下しており、視空間性ワーキングメモリに関して比較的良好な領域と機能低下が見られる領域があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
知的障害児・者および定型発達児を対象に必要数のデータを収集し分析することができており、おおむね計画通りに研究を進行することができているため。
次年度では、本年度に行った検討を拡張し、知的障害児・者および定型発達児を対象とした調査や実験を新たに行う予定である。
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Journal of Special Education Research
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