研究課題/領域番号 |
17H07217
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
堀 美喜 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (40804422)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞毒性試験 / 有機材料 / 経時的変化 / AREレポーターアッセイ / 分泌型発光遺伝子 |
研究実績の概要 |
これまでに使用していたレポーター遺伝子(ホタルルシフェラーゼ遺伝子:luc)と、コドンユーセージが高いもので構成された高発光型分泌発光遺伝子(ガウシアルシフェラーゼ遺伝子:pGluc)の発光活性比較を基本ベクターのpGLベクターにそれぞれ組み換え、HepG2細胞に一過性導入して検証した。この時、3種類のトランスフェクション試薬および細胞播種密度での導入効率の条件検討を行なった。また、分泌型発光タンパク質の特徴として、発光基質と混和させた瞬間が最も発光活性が高く、急激に活性が低下してくる。そこで、発光活性のピーク値および積算値での発光活性比較を行なった。発光タンパク質の試料はそれぞれpGL-lucは細胞溶解液、pGL-pGlucは培養上澄液を用いた。その結果、pGL-lucと比較して、pGL-pGlucで得られた発光タンパク質はピーク値で24倍、10秒間積算値で374倍の活性が出ることが判明した。このpGlucレポーター遺伝子をこれまでに構築したARE2-lucのレポーター遺伝子領域に組み込んだベクター(ARE2-pGluc)を構築した。この2種類の遺伝子を用い、HepG2細胞に一過性導入して発光活性測定を検討した。一過性遺伝子導入後、24時間培養した。その後、新鮮な培養液(control)に交換して、6時間後にそれぞれの発光タンパク質の活性を比較した。その結果、controlでの活性は、ARE2-pGlucは従来のARE2-lucと比較して約14倍の活性が得られた。また、歯科有機材料のHEMA5mMを刺激した時、controlと比較して12倍のARE活性倍率が得られることを確認した。これまでの結果により、従来の方法と比較して細胞を溶解することなく、培養上澄液でARE活性率の測定が可能であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画的に進めている。現在のところ、基礎的な条件検討などの実験が多いが、堅牢な細胞毒性試験システム構築には必須過程であり、事象をひとつずつ検証している。
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今後の研究の推進方策 |
新規に構築している細胞毒性試験方法は、発光タンパク質を分泌する過程が存在する。そのため、様々な歯科用有機材料の分泌能への影響を検証する必要がある。具体的には、本実験で使用した分泌型発光遺伝子のみを単純ベクターに組み込み、歯科用有機材料の有無による発光能の差異がないかを検証する。さらに、細胞外へ分泌された発光タンパク質の発光強度が歯科材料による影響を及ぼさないかどうかの検証も必要となる。この実験には、先に実験で用いた単純分泌型発光遺伝子導入ベクターにより得られた発光タンパク質含有の培養上澄液を用い、歯科用有機材料の有無による発光強度への影響を検証する。これらの詳細な条件検討ののち、 薬剤耐性遺伝子を組み込み、ステーブルクローン細胞の樹立を行う。発光量が高く、さらに歯科有機材料に対する反応率の高い細胞を選択することにより、高感度かつ安定した細胞毒性試験法の確立を目指す。 また、現在のところ、細胞刺激後6時間後の時点での計測のみであるため、最終的な目的である経時的変化の検証を行う。具体的には、これまでに検証してきた実験結果との相関があるかを検証したのち、このステーブルクローン細胞を用いて細胞刺激後 、1、2、4、6、8、10、24時間の経時的変化を連続的に観察する。このとき、発光タンパク質が培養上澄液に飽和状態になり、分泌能の低下を起こさないよう、各計測段階で培養液の交換をすべきかどうかの検証も追加する。この時、細胞播種濃度の検証も必要となる。各段階ごとに随時検証を行い、堅牢かつ精度の高い、簡便な細胞毒性試験の構築を目指す。論文は各段階で随時発表予定であり、新規の細胞毒性試験法として、国際規格への提案を視野にいれているため、海外への発表を目指す。
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