歯科用有機材料(メチルメタクリレート系材料)は、細胞内で酸化ストレスとして作用し、遺伝子上の抗酸化剤応答配列(Anti-Oxidant Responsive element:ARE)を活性化する。この事実を利用し、これまでにARE遺伝子の下部にホタルルシフェラーゼを組み込み、AREの活性化量を発光量の測定により定量化する(レポーターアッセイ法)方法を確立してきた。しかし、本方法は発光量を測定する直前に、細胞膜を溶解させ、細胞質溶液を作製する必要がある。すなわち、細胞を死滅させてしまうために時系列的な評価が困難であった。そこで、本研究では、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を、高発光性分泌型タンパク質であるガウシアルシフェラーゼ遺伝子に組み変えることによって、上記問題を解決することとした。 ARE遺伝子をタンデムに乗せた後、ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を下部に組み込んだ遺伝子を構築した(pARE-pGL)。解毒に関与する組織細胞であるヒト肝がん細胞(HepG2細胞)を主株とし、遺伝子導入し、歯科有機材料として頻用されるヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)に対する発光量を比較したところ、細胞質内の発光量で261倍、培養上澄液の発光量で643倍もの発光量を示した。そこで、構築したpARE-pGL遺伝子に薬剤耐性遺伝子を組み込み、ステーブルクローンを樹立した。コントロールに対するHEMA刺激時の発光量が高い細胞を選択した。ステーブルクローン細胞の名前はHepG2-AG11細胞とした。このHepG2-AG11細胞を利用し、歯科用有機材料の経時的な反応、および他の材料に対する応答性の評価を行った。
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