作品の背後にある宗教知の全体像に近づくことによって、これまで個々の作品ごとにしか扱われることのなかったフローベールにおける宗教のテーマを総体的に浮かび上がらせた。このテーマは哲学や道徳、政治社会、さらに科学の諸分野(医学、生命科学、生物学)とも密接に結びついており、今後も様々な形で発展が可能である。また、作品に描かれた宗教形態の多様性は、今日の宗教的共存や政教分離の問題へとつながる問いでもあり、本研究で得られた成果は、文学のみならず、歴史学、宗教学、社会学、思想史といった他の専門分野に十分に資するものである。
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