カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)は、感染症を生じた際の有効な治療法が極めて限られる、公衆衛生上重要な耐性菌である。CREの中でもカルバペネム分解酵素(カルバペネマーゼ)を産生するもの(CPE)は特に厳重な監視・対策を必要とする。本研究は、藤田保健衛生大学病院にて2012年から現在までに分離されたCPE菌株につき、ゲノム解析と古典的分子生物学を併用し、当該病院での経時的なCPEの分子疫学を明らかにすることを目的とする。当該病院臨床検査室で分離されたEnterobacter aerogenesとKlebsiella pneumoniaeの臨床株計88株中につきディスク法による感受性試験の再検を行った(セフタジジム、セフメタゾール、セフポドキシム、セフェピム、ピペラシリン/タゾバクタム、シプロキサン、レボフロキサシン、テトラサイクリン、イミペネム、エルタペネム、メロペネム、アミカシン、ゲンタマイシン、ホスホマイシン、コリスチン)。その結果、ほぼ全株がカルバペネムに非感性(耐性または中間耐性)であることを確認した。これらCRE株はカルバペネムを含めたβーラクタム薬には耐性を示すものの、フルオロキノロン系やアミノグリコシド系の抗菌薬にはほぼ感性であり、海外で問題となっているCRE(複数系統の抗菌薬に耐性)とは異なる表現型を示すことが確認された。また、これに合わせてDNA精製キットを用いてゲノムDNAの抽出を行った。また、本研究はCPE保菌または感染症発症例の臨床像を記述的に明らかにすることも目的とすることから、当該施設の倫理委員会の承認を得たうえで、臨床情報を入力するためのRedCapによるドラフトデータベースを作成した。
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