研究課題/領域番号 |
17H07229
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
平島 太郎 愛知淑徳大学, 心理学部, 講師 (50803110)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 社会的ネットワーク / 社会的認知 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人と人とのつながりである社会的ネットワークのサイズに焦点を当て、大規模な協力社会を支える基礎的な心理メカニズムを明らかにすることである。従来の研究では、心の理論といった他者の意図や感情を理解する「対個人」の社会的認知機能を基盤とし、多数の2者関係を結ぶことで大規模な社会的ネットワークが形成されると考えられてきた。しかし、この理論的想定は、実証的には支持されていない。本研究では、複数他者に関する情報を効率的に処理する「対集団」の社会的認知を基盤とし、複数の集団への所属を介して大規模な社会的ネットワークが形成されるというモデルを立て、その妥当性を検証することが目的である。平成29年度は、以下の3点について研究を進行した。(1)「対集団」の社会的認知機能を測定する課題について、国内の関連学会に参加し、専門家との意見交換を行い課題内容を精緻化した。(2)先行研究で扱われた「対個人」の社会的認知機能を測定するための課題の邦訳版を作成した。具体的には、実験材料を日本語訳し、刺激の音声化を行い、オンラインアンケートに組み込み、データを取る態勢を整えた。(3)先行研究では明示されていなかった社会的ネットワークの構造に関する前提条件を検証するため、パーソナルネットワークの構造を検証するためのオンラインアンケートを作成した。回答者の反応に応じて動的に呈示内容を変化させ、社会的ネットワークの測定にかかる回答者の負担を軽減するプラットフォームを整えた。今後、(1)~(3)で開発された課題やアンケートを用い、社会的ネットワークの形成プロセスを検証するためのデータを収集し、分析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画から、計画の遂行がやや遅れている。主要な要因として、先行研究で扱われていた社会的認知機能の個人差を測定する課題について、日本で利用可能な同等の課題が無く、邦訳版を作成する必要が生じたためである。さらに、本測定課題は、刺激となる文章を音声で呈示することから、音声の録音や調整が必要となった。ただし、先行研究と同一の課題の邦訳版を作成したことで、先行研究の追試に基づき本研究のモデルを検証することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作成した課題やネットワーク測定のためのアンケートを用い、社会的ネットワークサイズの規定因に関する予備的な検討を行う。予備調査の結果に基づき、対象者の規模(人数および年代)をひろげた調査を実施し、回答者の社会的属性を統制したうえで、心理変数と社会的ネットワークサイズとの関連を検証する。交付額の都合上、縦断調査を実施することが困難となった分、横断調査の規模を拡大することで、本研究で提案した「対集団」の社会的認知という新たな要因を加えた、社会的ネットワークサイズを規定するモデルの妥当性を検証していく予定である。
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