本研究における本年度の実施内容は,昨年度に引き続き「美しさ」の評価法の確立を行うことであった.2017年度途中に2017-2020年版採点規則について大幅な変更があったため,評価観点の定量化について一部データの収集方法にも修正が必要となり,分析手法の再検討を行ったためである. 新体操パフォーマンスにおいて評価者が感じる印象の構造を解明することと,音楽と印象の関係性を「美しさ」の評価を通して明らかにすることを目的とし,そのため演技動画の印象評価と「美しさ」評価のためのアンケート調査を実施した.新体操における印象と「美しさ」に音楽が及ぼす影響について検証を試みた.「ダンスステップコンビネーション」(約8秒間の動きのシークエンスであり,その巧緻性や多様性,音楽との同調性等の表現力が芸術的な評価の対象となる.)を分析対象とし,第35回世界新体操の女子個人競技予選4種目の演技からダンスステップコンビネーション部分を切り取り,ランダムに抽出したものを12本の呈示動画とした.舞踊運動における評定用語19項目の対語を印象評価項目として採用した. 検証の結果,音楽の有無により印象は異なり,特に演技の質感は音楽の影響を強く受けた.美しさ評価も,音楽の有無によって有意に差があり,音楽を伴うことで評価が低下する傾向があった.さらに美しさ評価の低下には,安定感に関わる印象が影響を及ぼしていることが明らかとなった. 舞踊においては観察者の経験によるところの審美眼がパフォーマンスから受ける印象を大きく左右することからも,新体操経験や舞踊経験を有する評価者と一般評価者との比較をさらに追求すれば,評価と感受との間で生じる「美しさ」に対する違和感のメカニズムを明らかにできる. 本研究で得られた結果については,取りまとめ成果報告として今年度日本スポーツパフォーマンス学会・日本感性工学会で公表した.
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