研究課題/領域番号 |
17H07236
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小松原 郁 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (20803125)
|
研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
キーワード | 宮廷美術 / 葬礼美術 / 墓碑 / ルネサンス / 美術史 / 西洋美術史 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、15世紀北イタリア諸宮廷の葬礼美術の図像の特質と社会的背景を明らかにするため、特にリミニ及びミラノの宮廷で15世紀に制作された墓碑墓廟に着目し、その図像の特質と社会的背景についての調査研究を行った。 具体的には、2月22日~3月13日にかけて、リミニのマラテスタ家墓碑を擁するサン・フランチェスコ聖堂、ミラノ及び近郊のヴィスコンティ家及びスフォルツァ家墓碑を擁する聖堂(チェルトーザ・ディ・パヴィア修道院聖堂、ミラノ大聖堂、サン・ゴッタールド聖堂、サンテストルジョ聖堂)において君主の墓碑及び墓廟聖堂の調査を行い、墓碑の図像や形式と、それを擁する墓廟聖堂の装飾との図像的連関を調査した。また、図像構想における都市間の相互刺激、君主間の政治的関係の墓碑墓廟の図像への影響を考察するため、北イタリアの君主の墓碑図像との比較対象としてメディチ家墓碑、教皇、ヴェネツィア総督の墓碑図像の調査を行った。また、予定していた墓碑調査に加え、ヘラクレスを主題とした世俗装飾の貴重な残存例であるフェッラーラのパラッツォ・パラディーゾ内ヘラクレスの間の装飾についても実見調査することができた。ローマにおいては、マックス・プランク美術史研究所等にてヘルツィアーナ図書館にて専門的な文献資料の収集を行った。 北イタリアの君主墓碑については騎馬像形式のものに注目が集まり、調査を行ったこれらの墓碑は、単一の墓碑としてはその形式が一定でないことから関連付けられていない。しかしサン・フランチェスコ聖堂やチェルトーザ・ディ・パヴィア修道院聖堂では、君主の墓碑が家系の記憶の場を作り出すために聖堂装飾と関係性を持って構想されており、聖堂全体の計画を視野に入れ総合的に捉えることで、墓碑研究におけるこれらの作品の位置づけを新たにすることができることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2~3月のイタリア滞在で、墓碑、墓廟図像調査および資料収集を予定通り遂行し、必要な情報を収集できた。葬儀に関する史料については不足しているため、2018年度に引き続き文献収集を行ってゆく。一方で予定していた墓碑調査に加え、ヘラクレスを主題とした世俗装飾の貴重な残存例であるフェッラーラのパラッツォ・パラディーゾ内ヘラクレスの間の装飾についても実見調査することができたため、墓碑に散見されるモチーフでもあるヘラクレス神話図像のルネサンス期における受容形態の分析につなげられると考える。以上のことから、全体としては概ね予定通りに進んでいると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度は、2017年度に収集した図像の分析と文献資料の精読を進め、分析結果を適宜研究会、学会発表を経て論文化する。墓碑聖堂の装飾プログラムの流動性を視野に入れながら、北イタリア宮廷の墓碑図像を家系の記憶の伝達と再生産の場として捉え、その装飾プログラムの形成過程と独自性の再評価を試みる。メディチ家の墓廟であるサン・ロレンツォ聖堂の墓碑群との比較やヘラクレス図像の受容の分析などを通じて、図像やプログラムの構想における影響関係、また図像形成の社会的背景を明らかにする。
|