本研究では、北イタリアの諸宮廷において15世紀に制作された葬礼美術、とりわけリミニやミラノで制作された墓碑や墓廟聖堂の図像の特質とその社会的背景を明らかにするため、北イタリア諸都市において君主の墓碑および墓廟聖堂装飾の調査を行い、その図像や都市間の影響関係の分析を行った。特にリミニのマラテスタ家墓廟、サン・フランチェスコ聖堂(通称テンピオ・マラテスティアーノ)の装飾に着目し、聖堂内の墓碑と装飾図像を家系の記憶の形成という観点から再考することで、葬礼美術の系譜の中に位置づけて評価するとともに、15世紀後半の北イタリアの葬礼美術の図像の特徴の一端を明らかにした。また、図像や構成の着想源としては、14世紀にナポリ宮廷において制作されたアンジュー家の墓碑群や、君主称揚図像との関連を指摘し、墓碑や墓廟聖堂の図像構想における都市間の相互刺激、君主間の政治的関係の墓碑墓廟の造形への影響を明らかにした。
|