本研究は、我が国国際私法上、当事者自治が原則であるとの仮定の正当性を明らかにするものである。平成30年度は、前年度から引き続き、我が国国際私法上、当事者自治が原則であると仮定した場合に、①当事者自治が否定又は制限されうるか、いかなる根拠をもってそれがなされるのか及び②当事者自治原則の例外として、最密接関連地法へ客観的に連結することが正当であるかを明らかにすること並びに③我が国法の視点からの考察に取り組んだ。 まず、欧州人権条約及びEU基本権憲章並びにドイツ基本法上の権利を当事者自治原則の根拠とする学説が、いかなる領域において当事者自治が否定され、又は制限されるとしているか、また、その領域における当事者自治の否定ないし制限の根拠及び正当性を何に求めているかを分析した。そして、ここで明らかになった当事者自治が否定ないし制限される領域及びその正当性が、我が国においても妥当するのかについて、我が国の実質法を分析することによって考察し、一定の結果が明らかになった。 また、当事者自治と最密接関連地法への客観的連結の接合について、国内外の学説を分析した。もっとも、本研究の前提のもとでのこのような位置付けに関する議論は蓄積が十分であるとはいえず、結論は留保して今後も研究を続けることとした。 今年度の研究過程で得た成果については、渉外家事事件判例研究会(2018年6月)、渉外判例研究会(2018年10月)、国際商取引学会(2018年11月)で報告した。
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