研究課題/領域番号 |
17H07238
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
西岡 和晃 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (30802269)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 国際仲裁 / 競争請求 / 国際私法 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際仲裁における競争請求をめぐる法的状況を明らかとすることを目的としている。具体的には、(1)競争請求の仲裁可能性、(2)競争請求の準拠法、(3)競争請求に関する仲裁判断の執行可能性、(4)競争請求におけるクラス仲裁・第三者費用負担の利用可能性、(5)国際商事裁判所が仲裁に与える影響、の5つの問題を比較法的観点から研究することで、国際仲裁における競争請求をめぐる法的状況を明らかとする。平成29年度は、これら5つの問題に関する文献・情報を調査し、分析を開始したが、(1)競争請求の仲裁可能性と(3)競争請求に関する仲裁判断の執行可能性に関する研究を重点的に行った。具体的には、これらの問題に関する諸外国(香港やシンガポール、スイスなどの仲裁先進国だけでなく、ASEAN諸国など仲裁分野において発展途上にある法域も含む)の文献を調査するほか、諸外国(スイス、香港、マレーシア、フィリピンなど)の研究者・実務家に対するインタビューを行い、研究を進めた。仲裁分野の先進国と発展途上にある国のアプローチの双方を考察した結果、競争法・競争請求をどのように扱うべきか、ひいては仲裁制度をどのように位置付けるべきかについて、大きな示唆を得た。これらの研究成果については、2018年9月に開催される学会にて報告し、その後、論稿を公表する予定である。 (2)・(4)・(5) の問題については、本年度末に着手したばかりでありではあるが、特に(2)については、仲裁の根幹にある当事者自治と国家の公益とのバランスをどのようにとるかが各アプローチの分かれ目であることが明らかとなっている。来年度は各アプローチについてより詳細な検討を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の目標は、①前述の5つの問題に関する文献の収集及び分析を開始し、②(1)競争請求の仲裁可能性と(3)競争請求に関する仲裁判断の執行可能性についての研究成果をまとめることであった。①(1)・(2)・(3)の問題については、非常に多くの文献を収集することができた一方で、(4)・(5)の問題については、諸外国で公表されている文献も少なく、引き続き文献収集する必要がある。②の目標については、一定の研究成果を得ていることから、概ね予定通りに研究を遂行できたと評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、(1)・(3)の問題にかかる最新の動向を追いつつも、(2)・(4)・(5)の問題について重点的に研究を進める。具体的には、(2)については関連する文献を既に収集していることから、この問題を優先的に扱い、国際仲裁において競争法をどのように扱うべきかについて考察する。(4)・(5)については、引き続き文献収集を進める。(4)については、これらの制度が認められている仲裁先進国、特に香港、シンガポール、米国を主たる対象として、引き続き調査研究を行う。(5)については、当初の計画では、シンガポール国際商事裁判所に焦点を当てる予定であったが、近時、国際商事紛争に特化した「国際商事裁判所」が諸外国でも設立され始めていることから、検討対象を拡げた上で、国際商事裁判所が与えうる仲裁への影響について考察する。これらの問題については、平成30年度後半に論稿を取りまとめる作業を行う予定である。
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