本研究は、国際仲裁における競争請求をめぐる法的状況を明らかとすることを目的とするものである。本年度は、①国際仲裁と競争請求に関する文献の収集・現地調査、②研究成果のとりまとめ・公表を行った。 ①国際仲裁と競争請求に関する文献の収集・現地調査:前年度からの継続事項として、国際仲裁と競争請求に関する文献を収集すると同時に、シンガポールおよびミャンマーの研究者・実務家に対するインタビューを実施し、各国における最新の動向についても調査を行った。実地調査の結果、ミャンマーでは、競争請求そのものがほとんど認識されていないこともあり、国際仲裁との関係についてほとんど議論がないこと等、シンガポールでは、競争請求自体は認識されているものの、国際仲裁との関係ではあまり議論がないこと等が判明した。 ②研究成果のとりまとめ・公表:競争請求の仲裁可能性と競争請求に関する仲裁判断の執行可能性の問題については、一定の成果を見ることができたため、研究成果を研究会および学会において報告したほか(第6回北陸国際関係私法研究会、国際法学会2018年度(第121年次)研究大会)、当該研究報告に基づく論文を学会誌(国際法外交雑誌)において公表する予定である。また、競争請求の準拠法との関係では、競争法の国際的適用範囲が問題となることから、日本の独占禁止法の国際的適用範囲についても研究報告(2018年5月度渉外判例研究会)を行うとともに、研究成果を公表した(「外国で締結された国際カルテルへの独禁法の適用を肯定した事例-最三小判平成29・12・12」ジュリスト 1526号142-145頁)。その他の問題については、2019年内に研究成果を公表する予定である。
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