研究実績の概要 |
本年度は、日本人青年の自殺に関わる要因の1つとされる死後の未来展望 (Zimbardo & Boyd, 2009) に着目して質問紙調査と実験を行い、その成果報告を行った。 質問紙調査では、日本人青年が持つ死後の未来展望を測定する尺度を作成し、その妥当性を検討した。はじめに、大学生95名を対象に予備調査を行い、日本人青年が死後の未来をどのように展望しているのかを検討し、尺度の項目を作成した。本調査では、大学生225名に調査を行い、自殺との関連が指摘されている自殺への態度や、動機づけ、アイデンティティ形成などとの関連から、予備調査で作成した項目を検討し、尺度の作成と妥当性の検証を行った。また、海外で使用されているTranscendental-future time perspective scale (Boyd & Zimbardo, 1997) を日本語に翻訳し、当該尺度との関連についても検討した。その結果、主に自殺との関連が指摘されている自殺への態度との関連から、本尺度の妥当性が示された。また、こうした妥当性は、海外で使用されている尺度の翻訳版では確認できなかった。 実験では、大学生50名を対象に、VR(仮想現実)を用いたシナリオ実験を行った。自殺の危険因子とされる抑うつ (文部科学省, 2009) を指標として、青年の自殺の抑制要因とリスク要因の検討を行った結果、社会的なつながりの重要性が示された。特に、死後の未来展望の1つとして、死後の未来に対して過度な期待を持っている場合には、仲間外れなどで社会的なつながりを奪われることが、自殺の危険因子とされる抑うつを高めることが示された。 以上の結果について、国内学会および国際学会において発表された。
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