研究課題
グルコースは脳の主要なエネルギー基質であるにもかかわらず、このグルコースが過剰に血中に存在する食後高血糖は認知機能を低下させることが明らかにされており、これは糖尿病患者で低下する認知機能と関連している可能性がある。本研究では、この脳の主要なエネルギー基質であるグルコースと認知機能の乖離に着目し、高血糖が誘発させる脳機能へのネガティブな作用のメカニズム解明に向けたアプローチを行うことを目的として取り組んでいる。また、高血糖だけに留まらず、血中グルコース濃度が不足する低血糖状態も認知機能を低下させることが明らかとなっている。本研究では、こうした高血糖および低血糖誘発性の脳エネルギー代謝不全および脳機能低下が関連するのか?グルコースではない他の栄養処方によって、こうした脳に対するネガティブな作用を改善できるのか明らかにすることも目的として取り組んでいる。平成29年度では、食後高血糖が高次脳機能である実行機能や脳循環調節機能、ブレインヘルス関連のバイオマーカーや心理ストレスに負の作用がある傾向を示した。さらに、トレーサーを用いて、全身性のエネルギー基質がどの程度脳において代謝され、これが脳機能にどのように影響を与えているのか検証した(データの解析に関しては平成30年度に実施予定)。また、実際に乳酸を静脈注射して、末梢の代謝変容を起こした時の脳代謝動態および脳機能の応答に関して検証するための予備実験も行い、今後の研究展開に対する課題を得た。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通り、平成29年度では、食事誘発性の高血糖が引き起こす脳機能へのネガティブな作用を検証した。さらに、トレーサーを用いて、全身性のエネルギー基質と脳代謝動態の関連性を検証する実験も遂行し、現在解析中の段階にある。2年目では、計画していた低血糖誘発性の脳機能の低下を乳酸の負荷によって改善することができるのか検証していく。したがって、概ね順調に研究が遂行できていると判断できる。
今後は、低血糖誘発性の脳機能の低下を乳酸の負荷によって改善することができるのか検証していく。加えて、抗酸化作用のある栄養処方と運動の併用によって、運動誘発性の認知機能亢進効果がさらに促進されることのメカニズムを解明すべく、酸化ストレス応答に関しても検証していく。また、これまでの研究成果について、学術論文として公表する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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