研究課題/領域番号 |
17H07245
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
金津 日出美 立命館大学, 文学部, 准教授 (40802103)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 植民地朝鮮 / 行旅病死人 / 社会的弱者 / 植民地社会事業 |
研究実績の概要 |
まず、以前より進めてきた植民地朝鮮における「行旅病死人」の状況とそれへの行政的対応に関する研究を公刊し(『部落問題研究』221号)、日本国内や台湾との比較も含めて「行旅病死人」の植民地状況を明らかにした。そこで明らかとなった植民地朝鮮の「行旅病死人」の発生状況の特徴はいかなる社会的コンテクストのなかにあったのかを明らかにするため、植民地朝鮮で刊行された文献、新聞・雑誌史料(日本語・朝鮮語を含む)等を収集・整理し、朝鮮社会事業研究会の動向、機関誌『朝鮮社会事業』の思想史的分析を進めてきた。これらにより、植民地統治権力が行った植民地近代的社会事業の様相を把握することに努めた。また、韓国・全州大学校所蔵の近代儒者関連の史料群の予備調査を行い、地域社会の救済慣行との関連を分析する準備を進めた。上記の作業により、近代化・植民地化による社会事業と地域社会の救済慣行との交差を検討・分析する基礎を整えた。 他方、『朝鮮総督府官報』データベースをもとに「行旅病死人公告」の入力作業を進めた。データ量が膨大なためいまだ全容を把握しきれていないが、植民地朝鮮で行き倒れた人びとの基礎的データ収集を行った。 そのほか、中国や韓国の研究者を招聘してのシンポジウム(総督府の史料編纂や各種の文化事業など)を開催・参加し、当該期の社会状況、文化状況に関する視野を広げた(2017年10月20日張憲生氏「わが日本史研究修行」、2018年1月27・28日シンポジウム「東アジア史学史のために」)。また、朝鮮時代の流民研究の第一人者である邊柱承氏の講演(2018年1月8日国際比較地域史研究公開研究会:部落問題研究所」に取りまとめ役として参加し、講演録の翻訳執筆、論文日本語訳を行い、朝鮮伝統社会の社会的弱者の状況について知見を広げるとともに、その成果を公表した(『部落問題研究』224号)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植民地朝鮮の社会事業に関する文献・史料収集は概ね順調にすすめられている。また、韓国での史料調査・研究交流も行い、次年度の研究の基礎を固めることができた。研究成果の公表については平成30年度に持ち越されるが、国内外での学会発表・論文公表を現在準備中である。 また、『官報』掲載の「行旅死亡人公告」入力作業はデータ数が膨大なため、煩雑さを極めているため、当初の予定より遅延しているが、平成30年度に集中的に作業を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に行ってきた植民地朝鮮で刊行された文献、新聞・雑誌史料(日本語・朝鮮語を含む)等の検討を、近代化と伝統社会、とりわけ地域社会の救済慣行との相剋などをキーワードとしてさらに進め、社会事業思想が流入・普及する社会的コンテクストを分析する。 また上記作業で得られた知見を、植民地台湾における社会事業・救済思想の移植や満州との比較を視野に入れて、その思想的共通性と差異を解明していく。ここでは台湾社会事業協会関係資料、機関誌『社会事業の友』、満州社会事業研究会・満州国社会事業連合会関連史料等を収集・分析し、帝国日本の本土・植民地・勢力圏を連環させ、共時的空間における近代救済知の偏在と地域性を明らかにする。 また、現在も進行中である「行旅死亡人公告」の入力作業を継続し、その分析を進めるとともに、韓国の研究者(高麗大学校・漢陽大学校・圓光大学校・全州大学校のメンバーなど)と緊密な連絡を取りつつ、近代以降の社会事業・救済思想に関する史料、朝鮮伝統社会における救済機能・思想に関する史料(『朝鮮実録』、各種儒家文集等)、朝鮮総督府関連史料、朝鮮各道庁史料を収集・分析し、当該テーマの分析・研究の深化をはかっていく。適宜、国内学会・研究会、国際学会での研究発表を行うとともに、学術論文を執筆し、研究成果の公表を図る。
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