前年度に引き続き、植民地朝鮮の社会事業に関する史料蒐集と分析にあたり、また総督府官報の「行旅病死人公告」の入力・分析作業を行った。植民地における「行旅病死人」の実態や状況に関する具体的分析はこれまでほとんど明らかではなかったが、研究代表者が公表した統計的数値分析と、日本本国での研究成果をあわせて把握することで、日本―朝鮮―台湾といった帝国内部での共通性と相違性が明らかとなった。また、2年度目の「官報公告」の分析により、統計資料ではみえない、「行旅病死人」の年齢、性別、行き倒れ先、埋葬先などの状況を把握することが可能となった。これらの情報は膨大な数にのぼるため、いまだ研究結果を公表できずにいるが、今後、研究発表・論文などの媒体で公表する予定である。帝国を越境する社会的弱者の置かれた状況を総体的に把握するため、満州・台湾関係の史料所在状況の確認など、予備的調査を行った。そのほか、植民地朝鮮の社会状況、宗教状況、地域社会と近代化に関する研究交流などを積極的に行い(フィールドワーク・史料調査の実施、研究者講演会・シンポジウム開催)、その成果の一部は学術雑誌、ニューズレターなどで国内外で報告されている(『東アジアの思想と文化』10号、東アジア思想文化研究会、2019年3月、『古い道と新しい道』9号、全州大学校韓国古典文学研究所、2019年3月、『新しい歴史学のために』295号、2019年10月刊行予定)。
|