本研究の目的は、1930年代から1940年代の日本の外地国策企業の企業内教育が、戦後日本の人的資本の向上や産業技術の普及に果たした役割を究明することである。2年間という研究期間を有効に活用するため、既に資料収集の見通しが立っていた南満州鉄道株式会社(満鉄)に焦点を絞り、課題を次のように3点設定し、研究を行った。【課題 1】満鉄の人事記録と厚生省の「引揚者在外事実調査」(1956年)の調査票を用い、旧満鉄社員の戦時中の職務経験と戦後の職業選択を統計的に把握する。【課題 2】満鉄における企業内教育(養成所及び職場での実地訓練)の実態と教育内容を、満鉄の社内資料から解明する。【課題 3】課題1と課題2で得られたデータベースと資料をもとに、満鉄の企業内教育によって若手社員が習得した知識は、戦後経済の中で、どのように活用されたのか、どのような知識がどの分野において役立ったのか、死蔵されたと考えられる技術や知識はあったのか、などを考察し、満鉄引揚社員の戦後日本経済における役割を検証した。 2018年には合計4回の研究報告を行った。得られたフィードバックをもとに、現在、London School of Economics のEconomic History Working Paper Seriesに論文を投稿している。2019年3月には、ハーバード大学とロンドン大学の満洲国研究者を招聘して、研究会を行った。また、「引揚げ」「移民」に関して、書評を2点発表した。そのうち一つは、世界的に評価が高い、"Economic History Review"に掲載された。
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