本年度は、前年度にアゼルバイジャン、ジョージア、ロシアにて行った資料収集の結果獲得した文書類を利用して、裁判制度の中でも婚姻事件に関する研究を行った。利用した文書の種類としては、裁判所間の連絡文書、訴状、判決書の写し、婚姻届の写しなどが挙げられる。その結果は、論文「ロシア帝政期南東コーカサスにおけるシャリーア法廷の「仲裁」」としてまとめ、5月に脱稿した。現在出版準備中の論集に収録される予定である。 8月25日から9月16日にかけては、アゼルバイジャン共和国に出張を行い、特に9月2日から14日にかけて、アゼルバイジャン国立歴史文書館における資料調査を行った。多くの文書類を目睹し、データを獲得したが、その大半が「教区簿冊」と呼ばれる類の文書である。これはロシア帝政期に作成されていた一種の戸籍であり、住民の結婚や離婚についても詳細に記録されている。また、バクー市内の複数の書店をめぐって最新の研究書などを入手したほか、現地研究者と面会し、情報を交換した。 帰国後に収集した文書の記録を整理・分析し、住民たちの結婚・離婚の具体的な様態を明らかにした。その結果は、3月23日・24日に開催された日本中央アジア学会年次大会にて、「ロシア帝政期南東コーカサスの村落における家族の姿」という題で口頭発表した。また、その内容に基づいた論文「ロシア帝政期南東コーカサスにおける村落住民の生涯」を執筆し、『龍大論集』誌に投稿した。
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