ロシア帝国が異民族統治にあたって、旧来の慣習や法制度を基本的に維持しつつも、その運用者たち(南東コーカサスの場合は「イスラーム聖職者」)をロシア官権の管理下に置いたり、帝国の法制度の中に組み込んだりすることを通じて中央との統合を進めていたことが明らかとなった。これは従来から言われていた「帝国」の統治のあり方、すなわち「多法域空間としての帝国」の議論をなぞったものに過ぎないが、本研究はそれがロシア帝政期南東コーカサスにおいても見られることを、文書史料などから実証的に明らかにしたことに学術的意義がある。
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