研究課題/領域番号 |
17H07264
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
首藤 崇裕 大阪歯科大学, 医療保健学部, 助教 (40804604)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | チタン / インプラント / 歯磨剤 / ブラッシング / フッ化物 / 研磨剤 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、各種歯磨剤を用いてブラッシングを行い、歯磨剤中のフッ化物・研磨剤の配合の有無と種類の違いがチタンの表面性状にどのような影響を与えるのかを材料学的な観点から検討した。 その結果、歯磨剤を用いたブラッシングによりチタン表面は摩耗し、研磨剤配合の歯磨剤を用いた場合にはチタン表面の摩耗がより促進された。研磨剤無配合の歯磨剤を用いた場合は水の場合と摩耗の程度がほぼ同等であった。チタン表面の色差および光沢度についても同様に、研磨剤無配合の歯磨剤を用いた場合は変化はほとんどなく、研磨剤配合の一部の歯磨剤は影響が大きかった。チタン表面性状の変化の指標となりうるこれらの解析結果について、肉眼およびSEM観察でも確認することができ、一部の研磨剤配合歯磨剤では特にチタン表面への物理的侵襲が大きいことが明らかとなった。これらのことに強く関与すると考えられる研磨剤粒子について、共通に重質炭酸カルシウムが配合されており、これらの研磨剤粒子は多角形状をしているものが多く認められた。したがって、研磨剤の種類および粒子の形状によりチタン表面の摩耗に及ぼす影響が異なることが推察された。また、色調に与える影響が大きかったフッ化物・研磨剤配合歯磨剤ではチタン表面に汚染様黒点が多く確認された。 ここまでの結果より、フッ化物と研磨剤の両者が配合されている歯磨剤の製品の中には、ブラッシングを行うことにより、チタンの劣化や腐食につながる可能性を持つものがあることが考えられた。また、インプラント用のフッ化物・研磨剤無配合歯磨剤はチタン表面に及ぼす影響が小さいことがわかり、インプラントやチタン製補綴物を装着している患者への歯磨剤選択の基準をより明確にするエビデンスを蓄積することができた。引き続き、生体適合性・安全性を考慮した分子レベルでの検証も行い、将来的には新規歯磨剤の開発へ繋げていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の検討事項である「歯磨剤を用いてブラッシングを行ったチタンの表面性状解析」を行い、歯磨剤中のフッ化物・研磨剤の配合の有無と種類の違いによって粗さや色調、光沢度などチタン表面への影響が異なってくることを明らかにし、今後、本研究を遂行していく上での重要なデータを得ることができた。しかし、平成29年度の研究期間や新規購入した摩耗試験機の実質の使用が当初の予定よりも遅れたこともあり、十分なデータが得られていない項目もあるので、表面性状への歯磨剤の影響に関して今年度も引き続き検証を行なっていく予定である。以上の理由から、平成29年度についてはおおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたチタン表面性状に関する知見を基盤として、分子レベルでの生体適合性評価を行う。チタンインプラントの表面性状はタンパク質の吸着や細菌・細胞の接着等に関与することが知られており、申請者がこれまでに行ってきた研究を含め、口腔インプラント治療におけるオッセオインテグレーションの早期獲得やインプラント周囲炎の予防を目指したインプラント体の開発において、微細な表面構造の変化とその生体適合性を検証するために培養細胞を用いた研究が多くなされてきた。本研究分野においても、これらの手法を参考に歯肉上皮細胞をターゲットにして、各種歯磨剤を用いたブラッシング後のチタン表面上での接着や増殖の程度、細胞形態、および接着因子の発現様式について解析を行う。
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