研究課題/領域番号 |
17H07265
|
研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
島田 明子 大阪歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (00452871)
|
研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
キーワード | 圧痛閾値 / エントロピー |
研究実績の概要 |
超高齢化社会に突入した日本における高齢者のQOL維持・向上および健康長寿のさらなる延伸のために、有床義歯装着患者が毎日快適な食事ができる環境を提供することは歯科医療従事者にとって重要な責務である。日本には総義歯装着者は2013年で10万人以上おり、機能的かつ栄養学的に食事を摂ることを意識した義歯の製作が必要とされている。そのような中、総義歯装着者に見られる臨床的主要兆候に『義歯床下粘膜の疼痛』が挙げられる。これまで義歯からの圧力についての研究は多くあるにもかかわらず、床下粘膜の圧痛閾値については未だ不明な点が多い。 本研究は、軟組織の圧痛刺激に対する応答の評価法として近年注目されている“エントロピー”の概念を口腔粘膜に応用することで、義歯治療の効果を予見するための基本的情報を客観的根拠に基づいて得ることが目的とする。 本年度は、総義歯装着患者の顎堤粘膜の触覚・圧痛閾値の測定を行った。測定はVon Freyフィラメントを用いて、下顎は前歯部、小臼歯部そして大臼歯部の頬側・歯槽頂部・口蓋/舌側の基準点計9点において、上顎は下顎と同様の基準点9点に加え、口蓋5点を加えた基準点計14点についてMethod of Limits法にてランダムな順序で行った。まだエントロピーを算出する十分なデータ数の収集ができてはいないが、本研究により、顎堤粘膜圧痛閾値の基準となるエントロピーを決定できれば、義歯作製開始前に『義歯床下粘膜の疼痛』の発現のリスクを予測し、効率的な義歯治療を患者に提供することができるため、次年度も引き続きデータの収集を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予防歯科の浸透、あるいはインプラント治療の普及により、義歯治療件数が減少傾向にあるためか、総義歯装着患者数が少なく、総義歯装着患者グループの被験者のリクルートが計画通りに進まなかったため。しかし、予定している人数は現実的に確保できる人数であるので、次年度は予定していたデータ収集は完了できると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
まずはVon Freyフィラメント試験で、上下顎岳亭粘膜における触覚・圧痛閾値のエントロピーを算出し、額堤粘膜に感覚以上を認めない総義歯装着患者の基準エントロピー値を理解する。 実際臨床の場面において、義歯作製前に患者の圧痛に対する過敏性について予見するためにはより簡易的な診査方法が必要と考えられるため、再テスト信頼性(test-retest reliability)の高く、手指での加圧と比較してもより正確に目標圧をかけることが可能な簡易型圧痛測定装置(Palpeter)を用いた顎堤粘膜における圧痛閾値評価方法の実行可能性についても検証していく。
|