がんなどの疾患において、異常な血管新生が病態の悪化に繋がることから、本研究課題では“血管新生阻害薬の創薬の基礎的検討”を目的として研究を行った。我々は、内因性の免疫調節因子である damaged assosiated molecular patterns (DAMPs) に着目しており、これはがんの進展および血管新生と関連することが知られている。DAMPs の中でも、糖尿病や加齢によって増加し、あらゆる疾患との関連が報告されている advanced glycation end products (AGEs) にまずは焦点を当てて検討を行い、以下の結果を得た。 平成30年度の研究実施計画に基づき、「① DAMPs 刺激による血管内皮細胞およびマクロファージの膜抗原発現パターン解析」を行った結果、AGEs 刺激によって、複数の膜抗原が濃度依存的に発現上昇することが示唆された。また、「② マトリゲルアッセイを用いた DAPMs 刺激による血管新生機序の解析と関連分子の探索」を行い、AGEs の濃度依存的な血管新生の促進効果が示され、この血管新生促進機序の一部に、複数の膜抗原が同時に関与することを明らかとした。AGEs はエンドサイトーシスによって血管内皮細胞内へ取り込まれており、このエンドサイトーシスが血管新生の促進において重要な役割を果たす可能性も見出した。さらに、AGEs による異常な血管新生を阻害する食物由来成分を見出した。 以上、AGEs による血管新生促進機序の一部を明らかとし、異常な血管新生を抑制する阻害剤も見出した。よって、我々の“血管新生阻害薬の創薬の基礎的検討”という目的は果たされたと考えられる。特に、食物由来成分を血管新生阻害薬の候補分子として見出したことは非常に有意義であり、今後の創薬研究に大きく寄与すると考えられる。本研究成果は現在、論文投稿準備中である。
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