研究実績の概要 |
本研究は, 多様な人材(ダイバーシティ)のマネジメントにおいて, 1人ひとりの力の発揮に焦点を当てるインクルージョンに着目し, 日本企業では, 特に上司や同僚との人間関係が社員のインクルージョンの認識を促進するという仮説(船越, 2016b)の実証とその職場への効果を明らかにすることを目的としている。本研究では, 日本企業において喫緊の課題であるジェンダー・ダイバーシティを中心に, 国籍のダイバーシティも含めた調査分析を行った。前年度から進めていた定性調査では, インクルージョンを促す仕組みを持つ先進事例企業のケースを軸に, 調査協力者のインクルージョンの認識及び, その促進や職場への影響を, 半構造化インタビューで得たデータから分析した。この調査では, 多様な社員, 特に日本企業でマイノリティ社員となりがちな女性や外国人がインクルージョンを認識するには, リーダーや上司のダイバーシティ・マネジメントへの意思表示と, 職場における属性カテゴリーを超えた接触や会話の促進が重要であることが明らかになった。また社員が得たインクルージョンの認識は, 企業側がメリットとして認識する成果に繋がる可能性が明らかになった。この調査から導き出された発見事実及び考察の一部は, 平成30年度に学会にて発表された。また, それらは学位論文の一部として帰結した。これらに加えて, 発見事実の一般化に向け, 当該ケース企業以外の調査協力者に追加で定性調査を行った。さらに, 機会を得て, 日本企業の海外法人で同様の定性調査を追加実施した。この調査によって, 国際比較の視点で分析が可能となり, 新たな考察や発見が期待できると考えている。前年度に実施した定量調査も含め, これらの調査については今後, さらなる分析を進め, 学会発表および論文執筆を進めていく予定である。
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