冠動脈結紮によるマウス心筋梗塞モデルを作製し、UVB照射による急性心筋梗塞後の心破裂や心不全の抑制効果・機序についての検討を行った。心筋梗塞作製から4週間の観察において、UVB照射により心破裂による死亡は抑制されなかったが、心不全に関連する死亡が有意に抑制されることを見出した。心筋梗塞を作製して4週間目まで生存したマウスにおいて、心臓超音波により心機能を評価したところ、UVB照射群では心機能低下は有意に抑制されていた。また、心筋組織の組織学的検討では、UVB照射群では非照射群に比べて心臓内腔の拡大は有意に抑制されていた。UVB照射群では、心臓所属リンパ節および心筋病変部における制御性T細胞は増加し、心筋病変部における抗炎症性M2マクロファージのマーカーの発現は有意に増加した。UVB照射により誘導された制御性T細胞にはケモカイン受容体CCR4を高発現するものが含まれていることが明らかになり、CCR4アンタゴニストの投与を行いその病態抑制への関与について検討した。CCR4アンタゴニストを全身投与すると、UVB照射による心不全関連死の抑制効果は消失し、抗炎症性M2マクロファージの誘導効果は消失した。以上のことより、UVB照射による病態改善の機序として、ケモカイン受容体CCR4を高発現する制御性T細胞の誘導の関与が示唆された。UVB照射により皮膚で誘導される制御性T細胞の病態抑制への関与を明らかにするために、紫色の光の照射により細胞をラベリングできる色変換蛍光タンパク質発現マウスを用いて検討を行った。UVB照射を行ったマウスの皮膚所属リンパ節および脾臓において、ラベリングされた皮膚由来の制御性T細胞は、細胞数としては少ないものの増加する傾向を認め、UVB照射により全身のリンパ組織への移動が促進されることが明らかになった。
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