研究実績の概要 |
本研究は、就学前の自閉症スペクトラム児(以下、ASD児)は、注視点検出装置であるGazefinder(以下、GF)を用いて測定した注視率が療育によって変化するか、療育による社会性の発達が療育前後のGFによる注視率の向上に関連するかを明らかにすることを目的に実施した。 2018年度は、2回目(療育終了時)の調査を行った。2017年度同様、療育施設に通所している4-6歳のASD児とその養育者に調査協力を依頼したところ、33組が調査に参加した。調査も2017年度同様で、子どもへのGF調査と養育者への質問紙調査であった。GF調査は、療育の最中に療育の担当者と養育者が見守る中で実施したため、GF調査前から子どもの拒否が強かった1名を除く、33名中32名が全検査を受けることができた。 2017年と2018年の2回調査を受けた29名は全員、全検査の50%以上を注視することができていた。療育前後で2種類の顔画面の注視率(まばたき中の口,口動き中の口とそれ以外,への注視率)に有意差が見られたが、それ以外の動画では注視率に有意差はなかった。療育前後の注視率で、静止顔画面での目、口、静止画面全体と社会性の発達年齢の変化量で関連が見られた(r=.385, .390, .516)。また、社会性の発達年齢の変化量は、療育開始時の年齢(r=-.488)、療育開始時の社会性の発達年齢(r= -.492)との関連も見られた。 本研究では、ASD児は、療育による社会性の発達と、静止顔画面を注視する力が関連している可能性が示された。社会性の発達を考えるうえで、注視力に注目する必要性が示された。
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