研究課題/領域番号 |
17H07291
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研究機関 | 宇部フロンティア大学 |
研究代表者 |
山崎 啓子 宇部フロンティア大学, 人間健康学部, 助教 (40803961)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 先天性心疾患 / 移行期支援 / 患者教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、先天性心疾患(congenital heart disease, CHD)患者が、個々の疾患やその病態を十分に理解し、生涯にわたり有意義な社会生活を送れるよう、CHD患者の看護ケアの一環を確立することを目指す。現在、CHD患者は医学の発展により、大部分は修復術後に成人期を迎え、良好なQOLを有している。しかし、一部の未修復手術患者、継続的治療中の患者、加齢に伴う心機能悪化を合併した患者も多く、その疾患管理や日常生活様式は多様である。本邦では、未だ循環器疾患の専門看護師(Certified Nurse Specialist, CNS)はいない。CHD患者の管理は、小児看護や慢性疾患看護のCNSが中心となり行われているが、その数は少なく、看護体制は不十分である。それ故、CHD患者が自立し、円滑に成人期医療に移行するためには、患者自身が疾病を理解・受容し、生涯にわたり自己管理能力を身につける必要がある。そのための教育プログラムの一環として、本研究では、CHD患者の成人診療科移行後の生活に役立つ患者への教育パンフレットの作成を目的とする。 本研究では、「成人期に個人の状況に応じて患者のもてる最大限の能力を発揮できるための小児期から成人期にわたるCHD看護ケアの確立」を目指して、九州大学病院循環器内科・小児科共同外来であるトランジショナル外来と全国心臓病のこどもを守る会(九州ブロック)にて、平成29~30年度の2年間で2点について研究を行う。①CHD患者の疾患管理認識調査として疾患別・年齢別・性別・疾患に関する教育受講経験の有無による疾患管理の認識の違いを明らかにして、成人診療科への移行後に必要な教育内容を検討すること、②CHD患者・家族への教育として、診療移行後のCHD教育パンフレットの作成と教育講演会を実施することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①CHD患者の疾患管理認識調査として、九州大学病院に受診中の患者200名の診療録およびチェックリストの調査中である。予定数の200名のうち約100名の診療録・チェックリストから情報収集を行い、現在登録中である。インタビュー調査は、2018年3月に実施した「CHD患者への講演会・情報交換会」の参加者を中心に対象者を選定、日程調整中である。 ②患者・家族への教育として2017年8月に全国心臓病を守る会大分県支部のCHD患者・家族、医療関係者に対して講演会、情報交換会を実施した。医療関係者を含めて参加者は30名程度であった。さらに2018年3月に九州大学病院通院中のCHD患者・家族、医療関係者を対象に「大人になった先天性心疾患患者さんと家族のための講演会」を実施した。参加者の内訳は、CHD患者・家族約20名、医療関係者約30名であった。講演会の内容は「先天性心疾患の予後と妊娠・出産」「心臓病の子どもが、思春期、成人となっていくときに知っていると良いことあれこれ」「成人を迎えたCHD患者のQOLとセルフケア」であり、その後患者や家族から日常生活を行う上での問題点などについて患者・医療者で情報交換会を行った。情報交換会では、日常生活上の様々な問題点・工夫など知ることができた。また、患者にとって必要教育内容の検討に向けた準備として関連する学会やセミナーに参加し成人を迎えた先天性心疾患だけでなく、移行期支援が必要な疾患の患者への教育などについて情報収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
患者・家族への教育として1年に1回程度予定していた講演会を2017年8月と2018年3月の2回実施したため、診療録やチェックリストなど後方視的調査とインタビュー調査の開始や終了が予定より遅れてしまった。しかし、繰り返し講演会・情報交換会を行ったことで、患者・家族との信頼関係を築くことができ、またインタビューへの協力者との日程調整が行いやすくなったと考えている。遅れている後方視的調査やインタビュー調査は、2018年8月を目標に調査を終了し、解析期間を12月まで延長して、それらの内容を2019年3月までにまとめながら、平行してパンフレットを作成していく予定である。今年度もパンフレット作成に向けた情報収集として学会やセミナーなどに参加し、専門家の意見などを聞きながら、内容を検討して作成していきたいと考えている。
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