研究実績の概要 |
本研究は、先天性心疾患(congenital heart disease, CHD)患者が、個々の疾患やその病態を十分に理解し、生涯にわたり有意義な社会生活を送れるよう、CHD患者の看護ケア確立に向けた一助となることを目的に行った。 CHD患者における「病気や治療の認識」「生活上の困難な経験」「就学、就職、結婚/妊娠についての不安」を明らかにし、今後のケアを検討するために16歳以上のCHD患者127名にアンケート調査を行った。さらに患者の病名・治療状況は診療録を用いて調査を行った。病名や治療の認識は、ほとんどすべての患者で診療録内容との齟齬はなかった。CHD疾患重症度が高いほど、「就学中」に困難な経験をしており、また「就業への不安」「疾患や治療に対する不安」「妊娠/出産への不安」を抱いていることが明らかになった。CHD患者に必要な看護を検討するために、「大人になった先天性心疾患患者さんと家族のための講演会」実施後に、日常生活上の問題や不安、生活の工夫について患者・家族合計10名と医療者でQ&A方式で意見交換を行った。そこで最も多かった質問は、「ほかの人たちと同様に仕事を続けていくにはどうすればいいのか」「友人や職場の同僚と食事に行ったときにどの程度アルコールを飲んでも大丈夫なのか」「足がむくみやすいので、予防方法はないのか」など疾患の自己管理方法についてであった。家族からは、「疾患管理を親があまり口出さないほうがいいのか」「いつごろ、どのような内容から自立させたらいいのか」などの質問があった。ここでは、自己管理方法への関心の高さと病態による個別性の高さが明らかになった。これらの結果から、疾患の個別性が高く、病状経過も様々なCHD患者では、日常生活の留意点を指導すだけでなく、その都度患者の個別性に合わせて対応していくことの重要性が示唆された。
|