本研究では、サービス生産過程に利用者が関与するコ・プロダクションの事例をもとに、関係当事者間の相互調整・協働に焦点をあて、利用者主権を担保した福祉供給の在り方を検討してきた。 平成30年度も、障害福祉分野のコ・プロダクションの事例であると位置づけた、日本の共同作業所とスウェーデンのパーソナルオンブズマン(Personligt Ombud:PO)を対象にインタビュー調査を実施した。国内調査では、複数の共同作業所にて、利用者の自治会活動の活発化や評議員への利用者の就任など、歴史的に顕著であった家族主体の組織運営から利用者主体に移行する動きが観察された。国外調査では、前年度に入手した資料の精査から、PO事業に関する法制度が確立しておらず、クライアントへの対応は各専門家の裁量に大きく委ねられていることが分かった。従って、社会庁への聞き取り予定を変更し、5つの基礎自治体にて担当POへの追加のインタビュー調査を実施・優先させた。 以上の調査結果をもとに、利用者主権を担保した福祉供給の在り方とは何か、コ・プロダクションの典型事例とされる日本の医療福祉生活協同組合やスウェーデンの協同組合型就学前学校との比較を踏まえながら検討をおこなった。結果として、「共同決定」「サービス供給への直接関与」「家族の介入」の指標から、(1)当事者主義的共同決定型、(2)家族主義的共同参加・共同決定型、(3)当事者主義的共同参加・共同決定型のコ・プロダクションの3類型が見出された。これは、各国で様々な様態をみせているコ・プロダクションの事例を整理する軸を提供するだけでなく、利用者主権の確保の在り方の多様性を示すものであると結論付けた。
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